- 2023-12-14
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IT技術の発達に伴い、私たちはあらゆるシステムに囲まれて生活するようになりました。例えば、金融系システムのおかげで給料が振り込まれたり、支払いができたりします。また、Web系システムがあるからECサイトで買い物ができたり、SNSで情報交換ができたりします。
そんなさまざまなシステムを開発しているのがシステムエンジニアです。クライアントの「こんなことがしたい」をシステムとして具現化し、私たちの生活や仕事を便利にしています。
この記事では、システムエンジニアについて、年収や仕事内容、プログラマーとの違いなどを解説します。ぜひご覧ください。
システムエンジニアとは?
システムエンジニアとは、その名の通りシステムを開発するエンジニアです。現場では「SE(エスイー)」と呼ばれることが多いです。
システムエンジニアは、システム開発の中でも「上流工程」を担当します。クライアントの要望をくみ取り、どのようなシステムを設計すれば良いか考えることが仕事です。
システム設計だけでなく、プロジェクトの進捗管理やプログラマーのマネジメントを任されることも多いです。現場によっては、システムエンジニア自身がプログラミングまで担当することもあります。
また、システムエンジニアの中には「社内SE」と呼ばれる職種もあります。社内SEは自社内のシステムを構築し、運用保守するエンジニアです。社内のパソコンやネットワークを管理したり、社員からのITに関する問い合わせに対応したりもします。
システムエンジニアの仕事内容は?
システムエンジニアの仕事内容を、以下の7点に分けて解説します。
1. 要求分析
2. 要件定義
3. 基本設計
4. 詳細設計
5. プログラミング
6. テスト
7. 運用保守
これらは、一連の仕事の流れになっています。
1. 要求分析
システム開発は、クライアントが求めるシステムをヒアリングするところから始まります。「要求分析」では、クライアントの要求を把握し、予算や納期なども含めて問題点がないかを分析します。問題点があれば、代替案を提案することも重要です。
2. 要件定義
要求分析でクライアントの要求に問題がなければ、次は「要件定義」です。システムの概要を「要件定義書」と呼ばれるドキュメントにまとめます。要求されるシステムのイメージを明確にすることで、開発メンバーへの指示や共有が可能になります。
3. 基本設計
要件定義によってシステムの概要が明確になったところで、次はそのシステムを具現化するための「基本設計」を行います。業務の流れを洗い出し、必要な機能や画面レイアウト、操作方法などを設計します。
4. 詳細設計
基本設計が仕上がったら、続いて「詳細設計」です。詳細設計は、基本設計で決めた内容をプログラミングするために必要となる設計です。「クラス図」「アクティビティ図」「シーケンス図」「モジュール構成図」などを作ります。
5. プログラミング
詳細設計を基に、プログラマーが「プログラミング」をします。システムエンジニアは、プログラマーへの仕事の割り振りや、プログラミング過程で生じる問題の解決、進捗管理などのマネジメントを担当することが多いです。
6. テスト
プログラミングの後は「テスト」が必要です。システムが設計通りに動作することや、さまざまな操作で不具合が発生しないかをチェックします。システムエンジニアは、テストの計画や設計を担当することが多いです。
7. 運用保守
システムは、納品して手離れすれば終了ではなく、リリース後に運用や保守まで任される案件もあります。システムの変更や改善によるアップデートのほか、テストで見逃されたバグによる障害などにも対応します。
システムエンジニア(SE)とプログラマー(PG)の違いは?
システムエンジニアとプログラマーは、現場によっては必ずしも明確に線引きがされていません。システムエンジニアがプログラミングをすることもあれば、プログラマーがシステム設計に携わることもあります。
しかし、一般的にシステムエンジニアはシステム開発の上流工程、プログラマーは下流工程を担当します。建築に例えるなら、システムエンジニアは建築家や現場監督で、プログラマーは大工などの職人です。それぞれ違いを見ていきましょう。
システムエンジニア(SE)
システムエンジニアは、システム開発の上流工程である「要件分析」「要件定義」「基本設計」「詳細設計」をメインに担当します。クライアントの求めるシステムを形にすることが仕事です。
しかし、クライアントの要求を何でも受け入れてしまうと、下流工程がいわゆる「デスマーチ」に陥るため、注意しなければなりません。デスマーチとは開発が間に合わず、プログラマーが全然休めない過酷な状況を意味します。
システムエンジニアはプロジェクトを完成に導く役割も担うため、「できること」と「できないこと」の見極めが重要です。できないことに関しては、納期延期や追加予算なども含めた代替案を提案したり、うまく断ったりする交渉術も必要です。
クライアントとプログラマーの板挟みになりやすいポジションのため、技術的なスキルだけでなく、コミュニケーション能力の高さや、メンタルの強さなども求められます。
プログラマー(PG)
プログラマーは、システム開発の下流工程である「プログラミング」「テスト」をメインに担当します。システムエンジニアが上流工程で設計したシステムをプログラミングして、実際に動作するシステムを作り上げることが仕事です。プログラマーのスキルによっては、上流工程から携わることもあります。
プログラミングをするためには「PHP」「Ruby」「Java」「Swift」「C#」「Python」「Go」「Rust」などのプログラミング言語が必要です。案件やトレンドによって、必要なプログラミング言語は変わります。同じ言語でも技術はアップデートされるため、プログラマーとして活躍し続けるなら、常にスキルを高め続けなければなりません。
システムエンジニアは、最低限どの技術で何ができるかを把握していればよいのに対し、プログラマーは、実際にその技術を使いこなしてプログラミングできる必要があります。
システムエンジニアに必要なスキルは?
システムエンジニアに必要なスキルを、以下の4点に分けて解説します。
1. コミュニケーション能力
2. マネジメント能力
3. 業務知識や業界知識
4. プログラミング知識
システムエンジニアは、総合的なビジネススキルが必要とされます。
1. コミュニケーション能力
システムエンジニアは、クライアントの要望をくみ取ったり、プログラマーにその要望を的確に伝えたりするためのコミュニケーション能力が必要です。クライアントに技術的なことを分かりやすく説明するスキルも求められます。
2. マネジメント能力
システムエンジニアは、プロジェクトの進捗やチームをマネジメントする能力が必要です。クライアントとプログラマーの間に立ち、両者をバランス良くかじ取りして、プロジェクトを完成に導く中間管理職的な役割を担います。
3. 業界知識や業務知識
システムエンジニアが業界や業務についての知識を持っていると、より的確にクライアントの要望をくみ取れたり、さらに良い提案ができたりします。製造業や金融業などの業界知識、生産管理や販売管理、会計、財務などの業務知識があると役に立ちます。
4. プログラミング知識
システムエンジニアは、クライアントの要求に対して「できる」「できない」の判断をし、最適なシステム設計をしなければなりません。そのため、プログラマーほどの高いプログラミング技術は必要なくても、プログラマーと対等に話ができるプログラミング知識は求められます。
システムエンジニアの平均年収は?
求人ボックス給料ナビによると、システムエンジニアの平均年収は、約516万円です。ただし、年齢やスキルによって約350万円〜約1,060万円まで幅があります。
エンジニア専門の転職支援会社メイテックネクストには、システムエンジニアの求人が1,900件以上掲載されていて、システムエンジニアの需要の高さがうかがえます。
給与の幅は400万~900万が多く、リーダーや部長クラスには1,000万以上の年収を提示している企業が複数あります。
システムエンジニアになるには?
プログラマーからキャリアアップし、システムエンジニアになるパターンが多いです。しかし、昨今のITエンジニア不足により、未経験からシステムエンジニアになれるチャンスは増えています。
チームを率いて何らかのプロジェクトを完成させたマネジメント経験があったり、開発するシステムの業界知識や業務知識があったりすると採用されやすいです。また、営業やサービス業などの経験があれば、コミュニケーション能力をアピールできるでしょう。
システム開発の知識に関しては「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」「システムアーキテクト試験」「ネットワークスペシャリスト試験」などの資格を取れば、未経験であっても一定の専門知識があることを証明できます。
プログラミング知識に関しては「ポートフォリオ」の作成が有効です。ポートフォリオとは、自分でプログラミングした制作物のことです。例えば「ECサイト」を作れば、会員登録やログイン、パスワード変更、カート、決済、評価、コメントなどの機能を設計し、実装できることをアピールできます。
システムエンジニアに向いている人は?
IT業界は技術開発の進歩が速いため、システムエンジニアには、常にアンテナを張って新しい技術を学んでいける人が向いています。新しい技術を学ぶことにより、システムの改善提案ができたり、コストを削減できたりするかもしれません。新しい技術を導入することは、スキルアップしたいプログラマーのモチベーションアップにもつながります。
また、これからますますDX(デジタルトランスフォーメーション)が、さまざまな業界や業務で求められます。中には全く知らない業界や業務のシステム開発を担当することもあるでしょう。
その際、好奇心旺盛な人は分からない分野にも積極的に取り組めるため、システムエンジニアとしての仕事を楽しめるはずです。
システム開発や運用保守は、突発的な仕様変更が必要になったり、トラブルが発生したりすることもあります。その際、パニックにならずに冷静に現状を整理し、論理的思考で解決の道筋を付けられるような人は、システムエンジニアの適性が高いです。
システムエンジニアに役立つ資格は?
システムエンジニアに役立つ資格試験として、以下の3点を解説します。
1. 基本情報技術者試験
2. 応用情報技術者試験
3. システムアーキテクト試験
いずれも情報処理推進機構(IPA)が主催する試験で、国家資格を取得できます。取得すれば、未経験でもシステム開発に関して一定の専門知識があることを証明できます。
1. 基本情報技術者試験
基本情報技術者は「ITエンジニアの登竜門」と位置付けられる資格です。この資格を取れば「ITを活用したサービスや製品、システム、ソフトウェアを作る人材に必要な基本的知識や技能を持ち、実践的な活用能力を身に付けた者」とされます。
また要求される水準として、「組織や社会の課題に対するITを活用した戦略の立案、システムの企画、要件定義への参加」「システムの設計や開発、汎用製品の最適な組み合わせ(インテグレーション)による、利用者にとって価値の高いシステムの構築」「サービスの安定的な運用実現への貢献」が上位者の指導の下で可能、とされています。
2. 応用情報技術者試験
応用情報技術者は「ワンランク上のITエンジニア」になれる資格です。この資格を取れば「ITを活用したサービス、製品、システム、ソフトウェアを作る人材に必要な応用的知識や技能を持ち、高度IT人材としての方向性を確立した者」とされます。
要求される水準として、「組織や社会の課題に対するITを活用した戦略の立案、システムの企画、要件定義の実施」「システムの設計や開発、汎用製品の最適な組み合わせ(インテグレーション)による、利用者にとって価値の高いシステムの構築」「サービスの安定的な運用」が独力で可能、となっています。
3. システムアーキテクト試験
システムアーキテクトは「業務とITのグランドデザイナー」とうたわれる資格です。この資格を取れば「高度IT人材として確立した専門分野を持ち、ITストラテジストによる提案を受けて、情報システムを利用したシステムの開発に必要となる要件を定義し、それを実現するためのアーキテクチャを設計し、開発を主導する者」とされます。
要求される水準として、「情報システム戦略を具体化するための情報システムの構造設計」「開発に必要となる要件の定義」「システム方式の設計および情報システムの開発」が可能で、下位者も指導できます。
システムエンジニアのキャリアパスは?
システムエンジニアとして経験を積んだ人は、さらに上流の「プロジェクトリーダー」や「プロジェクトマネージャー」にキャリアアップすることが多いです。
そのままシステムエンジニアとしての専門性を高める人、さらに技術的な専門性を高めて「ネットワークエンジニア」や「データベースエンジニア」などにキャリアチェンジする人もいます。
経営戦略などのビジネス面に興味があるならば、「ITコンサルタント」や「ビジネスコンサルタント」として活躍する道もあります。
また、システムエンジニアとして十分な経験を積めば独立も可能です。サラリーマンのような安定収入は保証されませんし、仕事も自分で取ってくる必要があります。しかし、フリーランスのシステムエンジニアとして活躍できれば、年収も上がることが多いです。
システムエンジニアはリモートワークとの相性も良いため、時間や場所に縛られない働き方もできます。ただし、コミュニケーション能力も含めて高いスキルが求められます。
システムエンジニアは、技術的な知識やマネジメント能力を生かして、適性や興味に応じてさまざまなキャリアパスや働き方が選べます。
システムエンジニアの転職を成功させるポイント
システムエンジニアの転職を成功させるポイントを、以下の4点に分けて解説します。
1. 応募する企業を研究する
2. 具体的なエピソードで自己アピールする
3. その企業でなければならない理由を志望動機にする
4. 転職コンサルタントのアドバイスを受ける
それぞれ見ていきましょう。
1. 応募する企業を研究する
転職で一番避けたいのはミスマッチです。仮に入社できても「思っていたのと違った」となってしまったら、その転職は成功とは言えません。そのため、応募する企業は求人情報だけでなく、Webサイトやニュース、口コミなど、あらゆる情報を集めて研究することが重要です。
企業のWebサイトにキャリアプランや社員インタビューが載っていれば、特に丁寧に研究するようにしましょう。入社後のモデルプランとなるため、そこに魅力を感じるならばミスマッチになる可能性は低いと言えるでしょう。
企業研究をすれば、その企業が求める人物像も見えてくるため、自己アピールや志望動機もマッチしたものが作りやすくなります。また、自分の実力が求められる人物像のレベルにほど遠いと感じたら、転職は焦らずに、今の職場でレベルを上げてから挑戦するのも賢明な選択です。
2. 具体的なエピソードで自己アピールする
企業研究をして、求められる人物像が分かったら、その人物像にできるだけ近い自己アピールができるように準備します。一般的にシステムエンジニアであれば「コミュニケーション能力」「マネジメント能力」「業界知識や業務知識」「プログラミング知識」などをアピールできるとよいでしょう。
自己アピールの際に重要なのは、具体的なエピソードです。ただ単に「コミュニケーション能力が高いです」と抽象的に伝えても、面接官にはそれが正しい情報なのか分かりません。コミュニケーションを通じてクライアントに喜ばれたり、現場の問題を解決したりした具体的なエピソードがあると、より能力や人柄をアピールできます。
自己アピールは、面接官に「この人と一緒に働きたい」「この人なら長く活躍してくれそうだ」と思ってもらわなくてはなりません。そのため、求人情報でリーダーシップを求められているのに、「黙々と作業する忍耐力」などのマッチしない自己アピールをしないように、注意する必要があります。
3. その企業でなければならない理由を志望動機にする
自己アピールと同様に、志望動機も企業研究をベースにした準備が必要です。ただ単に「システムエンジニアになりたい」「システム開発の上流工程にチャレンジしたい」という理由だけでは、他の企業でもできることなので、志望度が低いと面接官に思われてしまいます。
そのため、志望動機は「その企業でなければならない理由」を伝えると、より熱意や意欲を伝えられます。さらに、なぜその理由に至ったのかというエピソードもあると効果的です。企業理念に共感したことを志望動機にするならば、同じような価値観を持つことになったきっかけなどを伝えられるとよいでしょう。
Webサイトの社員インタビューなどに掲載されている人は、その企業にマッチして活躍している人なので、その人と同じように活躍したいという志望動機は、その企業でなければならない理由になりやすいです。
4. 転職コンサルタントのアドバイスを受ける
自己アピールや志望動機は、一人で考えても全然出てこなかったり、出てきても独りよがりなものだったりします。転職コンサルタントのアドバイスを受ければ、思いもよらない切り口が得られたり、より効果的な伝え方ができるようになったりするため、非常に有効です。
転職コンサルタントは企業や採用担当者の実情をよく把握しているため、より選考を通過しやすい自己アピールや志望動機を準備できます。自分では短所だと思い込んでいたものが、長所に変わることもよくあります。
また、転職コンサルタントは多くの企業を知っているので、求職者に対してこれまでのキャリアを生かしやすい企業を提案することが可能です。キャリアによっては、システムエンジニアよりも条件が良く、もっと活躍できる職種を提案してもらえることもあります。
システムエンジニアの会社選びのポイント
システムエンジニアは、さまざまな会社で求められています。そのため、どのように会社を選べば良いか迷う人も多いのではないでしょうか。会社選びのポイントの1つとして「どの工程を担当したいか」が挙げられます。
最上流の「要求分析」「要件定義」を担当したいなら、大手SIer(システムインテグレーター)がよいでしょう。システム開発は、大手SIerがクライアントとやり取りして、具体的なシステム設計はシステム開発会社が請け負うケースが多いです。
そのため、クライアントの要望をくみ取って課題解決に導く仕事がしたい人は、大手SIerを選ぶとチャンスが巡ってきやすいです。逆に、クライアントとのやり取りよりも、具体的なシステム設計に携わりたい人は、システム開発会社や中堅SIerを選ぶとよいでしょう。
また、「どの業界のシステム開発をしたいか」も会社選びのポイントです。例えば正確性や堅牢性が求められる金融系と、新しいものをフレキシブルに取り入れるWeb系では開発の雰囲気が全く異なります。
システムエンジニアの先輩の声
メイテックフィルダーズの山崎一彦氏は、半導体業界のシステムエンジニアとして29年のキャリアを持つベテランです。最初はプログラミング業務を担当していましたが、配属先のお客様から上流工程に携わることを勧められました。山崎氏は「システム開発では、お客様が何を求めていて、どんな機能を欲しているのかを正確に聞き出すヒアリング力が不可欠です。技術力だけでなく、ヒアリングや調整力をお客様が評価してくれたのだと思います」と述べています。
半導体業界で29年。洗浄装置の組み込み開発から、テスト工程の品質解析システム開発へ分野を変えたエンジニアキャリア──メイテックフィルダーズ 山崎 一彦氏 |
まとめ
システムエンジニア(SE)について、年収や仕事内容、プログラマーとの違いなどを解説しました。
少子高齢化による人材不足や既存システムの老朽化により、今後あらゆる分野でDX推進が求められると予想されます。システムエンジニアの需要はますます高まり、さまざまなキャリアを生かして活躍できる場がさらに広がるでしょう。
システムエンジニアの仕事に興味のある方は、ぜひメイテックグループにお問い合わせください。