- 2023-12-15
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- システムズエンジニアリング, メタンハイドレート, モデルベース意思決定支援, 日本メタンハイドレート調査, 東京大学, 東京大学大学院新領域創成科学研究科, 研究, 評価シミュレーションモデル, 評価モデル, 開発コンセプト
東京大学大学院新領域創成科学研究科の稗方和夫教授らの研究グループは2023年12月14日、日本メタンハイドレート調査と共同で、メタンハイドレート開発の商業的価値を評価し、俯瞰的に技術システムを検討できる評価モデルを発表した。技術的選択肢をモジュール化することで、さまざまな条件下で評価できる。
メタンハイドレート開発は、大規模な開発であるため、長期開発に伴う不確実性や多様なステークホルダーのニーズを踏まえながら、商業化に向けた開発コンセプトを絞り込む必要がある。研究グループは、これらプロジェクトの複雑さを整理し、意思決定者の決定を促進するため、メタンハイドレート開発コンセプトの意思決定支援ツールとなる評価モデルを構築した。
評価モデルは、開発フィールドやメタンハイドレート開発コンセプトを入力すると、そのコンセプトを評価する数値モデルで、技術的選択肢をモジュール化している。将来シナリオを踏まえながら、一度に複数のコンセプトを評価でき、意思決定者は想定する条件に基づいて俯瞰的なコンセプトの検討ができる。
システムズエンジニアリングのアプローチに基づいて開発されており、メタンハイドレート開発をコンセプトに必要な機能の分析でモデル化している。出力の評価軸は、ステークホルダーのニーズをネットワーク分析することで設定した。
評価モデルには、生産量の変動や故障率など、複数の不確実性を実装。特に未成熟な技術開発コストなど、専門家ですら決定論的に決めることができない変数は、評価モデルに幅として入力される。
今回、技術選択項目を生産方法、輸送方法、エネルギーキャリア、CO2貯留先に分類し、そこでの技術的選択肢を組み合わせて35のコンセプトを生成し、ケーススタディとして、20年間の稼働シミュレーションをそれぞれのコンセプトで実施。エネルギーの生産コスト、エネルギー収支比(EROI)を出力し、比較したところ、最適解の一つとして、それぞれ既往研究で提案されていた技術を組み合わせた、洋上発電プラントや洋上水素プラントが示された。
このことは技術システムの創発による相乗効果の大きさを示しており、コンセプトを体系的に評価し、俯瞰的に比較検討できるモデルベース意思決定支援の強みを明らかにした。
今後、ステークホルダー間での検証作業を予定している。今回開発された評価モデルのようなモデルベース意思決定支援は、商業化に向けたメタンハイドレート開発など、先例のない未知のシステムに関する議論の促進が期待される。
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