セラミックの超高速高温焼結法を開発――通常の焼結よりも1000倍高速

板状カーボン材料の急速抵抗加熱による、セラミック材料の超高速高温焼結方法が開発された。 Credit: Liangbing Hu's group at the University of Maryland, College Park

メリーランド大学の研究チームが、新材料創製のスクリーニングに向けて、セラミック材料の超高速高温焼結方法を発明した。従来の焼結炉を利用した製造方法では数十時間を要するプロセスを、板状カーボン材料の急速抵抗加熱により数秒の処理で実現するものである。研究成果が、2020年5月1日号の『Science』誌に公開されるとともに、その表紙も飾っている。

セラミック材料は幅広い有用な特性を有することから、広範な用途分野で使用されている。耐熱強度や耐摩耗性などを利用した構造材料として、また絶縁性や誘電性だけでなく、逆に半導体性や超伝導性を発揮することからエレクトロニクス材料としての活用も拡大している。しかしながら、セラミック製品の製造に用いられる焼成プロセスは、焼結炉の加熱および原料粉末の焼結にいずれも数時間以上かかり、全体として数十時間の長時間プロセスになっている。この焼成プロセスを短縮する代替技術として、高周波焼結や放電プラズマ焼結、フラッシュ焼結などが提案されているが、適応可能材料が限定されることや処理コストが高いなどの理由で、限界がある。

研究チームは、現在活発に研究開発が進んでいる全固体電池や燃料電池における電解質に最適な新セラミック材料開発に向けて、第一原理計算やAIを通じた新材料創製と並行して必要な実験的スクリーニングを、迅速かつ経済的に行える焼結プロセスの開発に成功した。発明技術では、セラミック原料粉末から構成されるグリーンペレットを、2つの板状カーボン材料でサンドイッチし、不活性雰囲気下でカーボン材料を急速抵抗加熱することにより、セラミック粉末を急速に焼結する。輻射と伝導の効果によって加熱速度および冷却速度が非常に高く、最高3000℃までの焼結温度が可能で、温度分布も均質である。その結果、総プロセス時間が10秒以下となり、通常の炉による焼結よりも1000倍以上も高速であることが確認された。

「この技術は、コンピュータシミュレーションやAI支援による新材料創製において、実験的検証が容易になるので、スクリーニングにおけるボトルネックを解消する。これまでにないスピードで、新材料を発見できる新しいパラダイムを確立した」と、研究チームは語る。材料科学工学科のLiangbing Hu教授は、「非常に高い加熱温度が達成可能なので、基本的にどのようなセラミック材料も焼結できる。更には、付加的な欠陥を意図的に導入することによって、非平衡のバルク材料を創成できる可能性もある。また、3Dプリンティングとの組合せも期待できる」と語る。この急速焼結技術は特許化され、メリーランド大学のスピンオフ企業High-Tech LLCによって商業化が進んでいる。

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