深海でも生分解性プラスチックが分解されることを実証――新たな分解微生物を多数発見 東京大学ら

東京大学は2024年1月26日、群馬大学らと共同で、生分解性プラスチック(ポリ乳酸を除く)が深海においても微生物によって分解されることを明らかにした。東京大学によるとこの発見は世界初となる。

これまで多くの生分解性プラスチックが開発され、さまざまな環境で生分解性が評価されてきた。しかし、海洋プラスチックごみが最終的に行き着く先である深海環境で生分解されるのかは評価されてこなかった。また、生分解性プラスチックを分解できる微生物が深海に存在するのかどうかも分からなかった。

今回の研究では、さまざまな生分解性プラスチックと汎用プラスチックを深海に3カ月から14カ月間設置。それらのサンプルの重量や形状の変化、表面に付着した微生物の解析を実施した。

設置したのは神奈川県の三崎沖(水深757m)、静岡県の初島沖(水深855m)、伊豆小笠原島弧海底火山付近の明神海丘(水深1292m)、黒潮続流域の深海平原(水深5503m)、日本最東端の南鳥島沖(水深5552m)の深海と、比較用に水深約5mの神奈川県横須賀市の海洋研究開発機構の岸壁だ。設置には有人潜水調査船「しんかい6500」とフリーフォール型深海探査機「江戸っ子1号」を活用した。

解析の結果、汎用プラスチックとポリ乳酸はまったく分解されておらず、ポリ乳酸以外の生分解性ポリエステルおよび多糖類エステル誘導体は、いずれも深海底で分解されていることが分かった。

生分解速度は水深が深くなるにつれて遅くなっており、これは水深が深くなることによる水圧や水温の変化、微生物の存在量や多様性が減少するために起こっていると考えられるという。

生分解性プラスチックの表面には微生物がすきまなく付着しており、それらの微生物の菌叢解析およびメタゲノム解析を実施。その結果、6種類の新たな微生物を発見した。これらの微生物は世界中の海底堆積物に存在していることが分かり、生分解性プラスチックの分解が世界中の海域でも可能だと考えられる。

深海における生分解性プラスチックの分解微生物による生分解

なお、今回の研究は東京大学、群馬大学の他に、製品評価技術基盤機構、産業技術総合研究所、日本バイオプラスチック協会による共同研究だ。

関連情報

生分解性プラスチックは深海でも分解されることを実証 ――プラスチック海洋汚染問題の解決に光明―― | 東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部

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