東北大が応力を記録する新材料の開発に成功 構造診断の技術革新に期待

東北大学は2024年5月9日、機械的刺激に対する応力を記録する新材料を開発したと発表した。新材料を構造物などの表面に塗布し、残光を観察すると、過去に受けた荷重を定量的、長期的に読み出せる。大学は、道路や橋、トンネルなどの構造診断への応用が期待できる成果だとしている。

東北大学や産業技術総合研究所などの研究グループは、プラセオジム(Pr)を添加したLi0.12Na0.88NbO3が、過去に発現した応力をさかのぼって読み出すことができる応力記録(Mechanical Recording:MR)機能を持つことを発見した。Pr添加Li0.12Na0.88NbO3は優れた応力発光特性と圧電特性を併せ持つマルチピエゾ体として知られているが、こうした特性を確認したのは今回の研究が初めてとなる。

これまで知られていた応力発光体は、応力が生じた瞬間にしか情報を観測できず、過去の荷重履歴を読み出すために、応力発光材料と感光材料を組み合わせた応力記録材料などが提案されている。しかし、今回開発されたMR機能を持つ応力発光体をあらかじめ対象物に塗布しておけば、表面にフラッシュ光を照射することでカメラや光センサーなどを用いて残光を計測でき、その情報から過去に発現した応力情報が得られる。さらに、この情報は5カ月経過しても保持されることが実験で確認できた。

応力発光材料を道路や橋などの構造物の表面に塗布し、亀裂を検出したり人工骨の応力分布を可視化したりする技術が開発されているが、過去に受けた機械的刺激の情報を読み出すことはできないのが課題だった。しかし、今回の新素材を使えば、電源や複雑な装置を使わずに、構造物などが受けた機械的刺激によって生じた応力を記録し、さかのぼって読み出せる。研究グループは、IoT技術と組み合わせることで、構造診断検査の人手不足の解消や費用削減につながる可能性があると期待を寄せている。

今回の成果は2024年4月25日、米国物理学協会誌『Applied Physics Letters』のオンライン版で公開された。

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