太陽光発電を活用し、塩分を含む水を飲み水に変える安価な新システムを開発

塩分を含む水を新鮮な飲料水に変える、太陽光発電駆動の新しい淡水化システムが開発された。これは従来の手法よりも20%以上安価で、世界中の農村部で導入可能だという。この研究は英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)と米マサチューセッツ工科大学(MIT)らが共同で行ったもので、2024年3月26日付で『Nature Water』に掲載された。

世界の人口のおよそ4分の1は「極めて高い」レベルの水ストレス下にあり、水不足に陥る可能性が非常に高いという。水ストレスとは、淡水需給がひっ迫して日常生活に不便が生じている状態のことだ。

世界の農村人口のうち16億人は水不足に直面しており、その多くが地下水に依存している。しかし、世界の地下水のうち56%は塩分を含んでおり、飲用には適していない。この問題は特にインドで顕著で、国土の60%で塩水が存在するため、飲用に適さない水を抱えている。

しかし、従来の脱塩技術は、水から塩分を除去するために必要なエネルギーの供給に、オフグリッドシステムの高価なバッテリーや、安定した送電網システムを必要としていた。発展途上国の農村部では、送電網インフラは信頼性に欠けるうえ、化石燃料に大きく依存しているため、脱塩処理をするのが難しい状況だった。

そこで、研究チームは、塩分を含む地下水を淡水に変換する既存のプロセスを基にして、太陽光発電を利用して一定水準の水を生成する新しいシステムを構築した。このシステムは、特殊なイオン交換膜から成るスタックを使って流路を流れる塩水から塩分を分離除去し、新鮮で飲める水を生成する。

この新システムの特徴は、日照量の変動に応じて、流れる塩水の速度と電圧を自動的に調整する点だ。水力に合わせて機器を動作させることで、高価なバッテリーの使用量を削減しつつ、飲用水の生成量に妥協しないシステムの開発が可能になった。

KCLの上級講師であるWei He博士は、「送電網システムの必要性を完全に排除し、バッテリー技術への依存度を92%削減することで、私たちのシステムは現地で排ガスを出すことなく、従来の方法と比べ、約22%安い価格で安全な飲料水を提供できる」と述べている。

研究チームは、インドのハイデラバード近郊の村で収集したデータを元に、アメリカのニューメキシコ州でこの村の状況を再現した。その結果、新鮮な飲料水を最大10立方メートル生成することに成功した。これは1日当たり3000人分に相当する量であり、くもりや雨が原因で変動する太陽光発電に左右されることなく、プロセスは継続して作動した。

研究チームは、今後インドで地元のパートナーと協力して、この技術をインド全土で普及することを目指す。また、この技術を廃水処理の他に、大気中のCO2を海洋が吸収しやすくなるよう、海洋をさらにアルカリ性寄りにするアルカリ製造など、他の分野に応用することも考えているという。

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