カリフォルニア工科大、汗から尿酸やチロシンを検出するウェアラブルセンサーを開発

Credit: Caltech

カリフォルニア工科大学の研究グループは、2019年11月25日、人間の汗を分析して血液中の代謝産物と栄養素の値などを測定できるウェアラブルセンサーを開発したと発表した。研究成果は、学術誌『Nature Biotechnology』に2019年11月25日付で掲載されている。

今回開発されたセンサーは、汗を分析する従来のセンサーよりも感度が良く、製造が容易であることから量産も見込めるという。従来のセンサーでは電解質、グルコース、乳酸などの化合物が高濃度で現れると検出するが、このセンサーは低濃度でも化合物を検出できるとしている。

Wei Gao助教授率いる研究グループが開発した汗センサーは、微小流体を操作する技術であるマイクロ流体力学(マイクロフルイディクス)に基づいたデバイスで、通常、幅0.25mm未満のチャネルを流れる流体が対象となる。このセンサーはマイクロチャネルを流れる汗をより正確に測定し、濃度の時間的変化を記録するという。

マイクロ流体力学を用いた既存のウェアラブルセンサーは、リソグラフィーや蒸着といったプロセス技術を活用して製造するため、製造工程が複雑でコスト高だったが、研究チームは炭素原子がシート状になっているグラフェンからバイオセンサーを作る手法を採用。さらに、センサー部とマイクロチャネルは、一般に普及している炭酸ガスレーザーでプラスチックシートをエッチングして製造する。

この汗センサーの測定項目には、呼吸数と心拍数に加え、尿酸値とチロシン値が含まれている。チロシン値は、代謝障害、肝疾患、摂食障害、精神神経疾患の指標として使われる。さまざまな被験者を対象にして、測定項目を正確に検出できるか一連のテストを実施したという。

チロシン値は体力に影響されることから、運動選手グループと平均的な体力の人のグループに分けて実験を行ったところ、予想通り、運動選手の汗から測定されるチロシン値は低い値だった。

尿酸値の確認には、健康な被験者グループを対象に、絶食中の汗や、プリン体が豊富な食事をした後の汗を測定し、食後に尿酸値の上昇を検出したという。また、痛風患者にも同様の実験を行ったところ、痛風患者の汗からは健康な人の尿酸値よりもはるかに高い尿酸値が検出された。

さらに、センサーの精度を確認するため、痛風患者と健康な被験者の血液を採取したところ、センサーの尿酸値測定結果は血液中の化合物濃度と強い相関性があったという。

今回開発されたウェアラブル汗センサーは「迅速かつ継続的、非侵襲的に、分子レベルで健康状態の変化を捕捉できる可能性がある」とGao助教授は述べている。患者にとっては注射針による痛みを感じなくてすむようになる一方で、医師は、循環器疾患、糖尿病、腎臓病などの患者の健康状態を継続的にチェックできるようになり、患者に合わせたモニタリングや早期診断、タイムリーな治療をすることができるようになるかもしれない。

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