髪の毛の太さより薄い太陽電池セルで、ドローンの飛行時間を延長する

photo credit: JKU

地球上でも宇宙空間でも、電力システムが独力で長時間稼働するには自律的なエネルギー供給が必要不可欠だ。遠隔地や予測不能な環境では、特に重要となる。この課題を解決するために、オーストリアのヨハネスケプラー大学(JKU)リンツ校の研究チームは、柔軟な超薄型ペロブスカイト太陽電池を開発した。厚さが髪の毛の太さの20分の1しかないが、1gあたり最大44Wという驚異的な出力を示す。研究成果は、『Nature Energy』誌に2024年4月17日付で公開されている。

化石燃料、バッテリー、その他の代替エネルギー生成など、従来のエネルギーソリューションには課題がある。例えば、大きすぎるサイズ、ケーブルや決まった場所での充電が必要、環境への悪影響、低すぎる電力密度などだ。

今回JKUの研究チームは、ペロブスカイトと呼ばれる新しい材料を用いて太陽電池を開発した。厚さ2.5μm以下の準2次元ペロブスカイト太陽電池で、高い柔軟性を維持しながら20.1%という高効率を実現する。44W/gという驚くべき出力密度は、他の太陽電池技術と一線を画するものだ。

動作信頼性や安定性が高く、柔軟性があり、出力重量比の高い太陽電池を作るには、低い気体透過性や高柔軟性と、プラスチック基板の透明性、太陽光発電材料の頑丈さとのバランスが必要となる。電池の動作安定性を改善するために、この太陽電池は、透明な酸化アルミニウム層を薄膜に塗布し、さらに太陽電池材料自体を最適化している。

開発した超軽量ペロブスカイト太陽電池を、手のひらサイズの市販4モーター型ドローンに搭載し、性能を試験した。その結果、ドローンは有線充電なしで充電―飛行―充電のサイクルを連続して行い、太陽電池が効率的で持続可能であることを実証した。また、ドローンに組み込んだ24個の電池の重量は、総重量のわずか400分の1を占めるに過ぎなかった。

この新技術は、捜索救助活動、大規模な地図製作、宇宙空間での太陽光発電、太陽系探査などに応用できる可能性がある。論文の主要著者であるJUKのChristoph Putz氏は、「超薄型、超軽量の太陽電池は、航空宇宙産業におけるエネルギー生成方法に革命をもたらす大きな可能性を秘めているだけではありません。この技術は、ウェアラブル・エレクトロニクスやIoTなど幅広い用途に恩恵を与えるでしょう。軽量で適応性があり、高効率の太陽光発電は、次世代の自給自足型エネルギーシステムを開発する鍵なのです」と述べている。

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