高稼働率の光格子時計を用いた、高精度の時系列生成に成功 産総研と横浜国立大学

産業技術総合研究所(産総研)は2024年6月8日、横浜国立大学と共同で、高い稼働率の光格子時計を用いて、協定世界時(UTC)との時刻差±1ns(10億分の1秒)以内という、高精度の時系列を長期間生成することに成功したと発表した。

現在、原子時計によって秒の定義が行われているが、光格子時計によってさらに高精度の秒定義ができれば、時刻や周波数なども現在よりも高い精度の基準の採用が可能になる。

連続運転が可能な水素メーザー原子時計の周波数を光格子時計によって調整し、長期安定した時刻系を生成することが、秒の再定義のために必要な条件の1つとされてきた。しかし、光格子時計は非常に複雑な装置のため稼働率が低く、光格子時計の停止期間中に水素メーザー原子時計の周波数が調整できないという課題があった。

国際的な時刻の標準であるUTCは、世界中の数百台の原子時計を加重平均して計算されている。UTCはリアルタイムでは取得できないため、各国の機関が水素メーザー原子時計などを用いてUTCにできるだけ近い値のUTC(各国機関名)を提供している。産総研でも、UTCからの時刻差が数十ns以内のUTC(NMIJ)を生成してきた。

UTC(NMIJ)は、水素メーザー原子時計の周波数を手動で調整することで、UTCとの時刻差を数十nsに抑えてきた。今回、水素メーザー原子時計の周波数を光格子時計で測定し、その周波数のゆらぎを自動補正することで、UTCの周波数に近づける手法を提案。周波数が近いと時刻差を抑えることが可能でこれまでも研究例があるが、光格子時計の長期運転が困難なために、停止期間が長いと時刻差が広がってしまうという課題があった。

今回の研究では、過去230日間にわたり光格子時計で水素メーザー原子時計の周波数を監視した際のデータから、最適な周波数調整の間隔を約20分とした。また、周波数調整値は、約20分ごとの光格子時計の稼働率と水素メーザー原子時計に固有の周波数ゆらぎの特性を考慮に入れた、周波数調整アルゴリズムにより決定。その結果、UTCとの時刻差を±1nsに抑えることができた。

今回の研究成果により、秒の再定義に向けた検討の加速が期待されるという。

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産総研:高い稼働率の光格子時計で世界最高水準の時刻系を生成

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