変換効率20%超のタンデム型太陽電池を開発――セレン化アンチモンとペロブスカイトを使用

CREDIT: ENERGY MATERIALS AND DEVICES, TSINGHUA UNIVERSITY PRESS

清華大学は2024年5月22日、中国科学技術大学と合肥工業大学の研究チームが、電力変換効率20%超のタンデム型太陽電池を開発したと発表した。研究チームは、セレン化アンチモン(Sb2Se3)をボトムセルに、ワイドバンドギャップの有機無機ハイブリッドペロブスカイト材料をトップセルに使用する太陽電池の概念実証を初めて実施した。

クリーンで再生可能なエネルギー源を提供する太陽光発電技術は人気があり、太陽電池の変換効率を向上させようとする研究が続けられている。従来の単接合型太陽電池では20%を超える変換効率を既に達成しているが、「Shockley-Queisser(ショックレー・クワイサー)限界」として知られている理論上の変換効率上限を超えるには、非常に大きなコストがかかることになる。

しかし、このような限界はタンデム型太陽電池を製造することで克服可能だ。タンデム型太陽電池は複数の異なる光吸収材料の層を重ね合わせた構造であり、単層の半導体材料を使用する単接合型太陽電池よりも太陽光を吸収する能力が高い。太陽光はさまざまな波長の光を含んでおり、タンデム型太陽電池は単接合型よりも多くの波長の光を吸収して電気に変換するため、単接合太陽電池よりもエネルギー効率が高くなる。

この研究はタンデム型太陽電池の新しい構造を提案し、セレン化アンチモンがボトムセル用途に有望な吸収体材料であることを実証するものだ。従来のセレン化アンチモンの研究は、主に単接合型太陽電池への応用に焦点を当てていたが、バンドギャップの観点から、研究チームはセレン化アンチモンがタンデム型太陽電池のボトムセル材料として適切であることを証明できる可能性があると考えていた。

そこで、研究チームは、ペロブスカイトとセレン化アンチモンを使用し、スペクトル応答を最適化するために透明導電電極を備えるタンデム型太陽電池を作製した。トップセルの透明電極層の厚さを調整することで、17%超という高い効率を得られた。また、セレン化アンチモンを使ったボトムセルは電子輸送層を二重にして最適化し、変換効率7.58%を達成した。

このトップセルとボトムセルを機械的に組み立てて4端子構造のタンデム型太陽電池を作ったところ、変換効率は20.58%を超え、独立したサブセルよりも高くなった。このタンデム型太陽電池は非毒性元素で構成されており、安定性に優れている。

今後、研究チームはより集積化した2端子型のタンデム型太陽電池の開発に取り組み、デバイスの性能をさらに向上させたいと考えている。論文の責任著者である中国科学技術大学のTao Chen教授は、「セレン化アンチモンの高い安定性は、2端子型のタンデム型太陽電池作製に大きな利便性をもたらす。つまり、相当数の種類のトップセル材料と組み合わせても、良い結果を得られる可能性があるということだ」と述べた。

この研究論文は、2024年3月4日付で『Energy Materials and Devices』に掲載された。

関連情報

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る