- 2024-5-16
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- Cell Reports Physical Science, アクティブラーニング, シリカ, シリコンポリマー, ノートルダム大学, 学術, 窓ガラスコーティング, 紫外線, 赤外線, 酸化アルミニウム, 酸化チタン, 量子コンピューティング, 量子焼きなまし法(注:量子アニーリング:目的関数の最小値を探す手法で、組み合わせ最適化問題の解法の一つ)
米ノートルダム大学の研究チームは4月2日、太陽の角度に関係なく遮熱できる窓ガラスコーティングを開発したと発表した。室内に光を取り込みつつ、熱を発生させる紫外線と赤外線を遮断する。建物や自動車の既存の窓に組み込むことが可能で、暑い気候であればエアコンの冷房コストを33%以上削減できる。研究成果は、『Cell Reports Physical Science』誌に2024年3月4日付で公開されている。
近年研究されている窓ガラスコーティングの多くは、窓に対して垂直に入射する光に最適化されている。しかし、実際の太陽光の窓への入射角は常に変化しており、例えば熱い時間帯である正午では、太陽光は地面に対して垂直に設置された窓に対して斜めの角度で入射する。
ノートルダム大学の研究チームはこれまでに、ガラス基板上にシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタンの超薄層を積層し、熱放射を反射して冷却力を高めるために1μm厚のシリコンポリマーを加えた、透明な窓ガラスコーティングを開発している。
しかし、窓ガラスコーティングをさまざまな角度の太陽光に対応させるには、積層の順番を最適化する必要があった。順番の可能な組み合わせはパターン数が膨大であるため、一つずつ試すアプローチは現実的ではない。そこで研究チームは、量子焼きなまし法(量子アニーリング:目的関数の最小値を探す手法で、組み合わせ最適化問題の解法の一つ)を用いて理想的な組み合わせを探索し、その結果を実験的に検証した。
その結果、さまざまな角度で光を透過させても、透明性を維持しつつ温度を5.4~7.2度低下させる窓ガラスコーティングの作製に成功した。暑い地域では、年間約97.5MJ/m2の冷房エネルギーを削減できるという。
研究チームは、「私たちのコーティングは、偏光グラスのように入射光の強度を弱めますが、サングラスとは異なり角度を変えても透明で効果的なままです」と述べている。また、今回コーティングを作製するために開発したアクティブラーニングと量子コンピューティングのスキームは、複雑な特性を持つ材料全般の設計に応用できるとしている。