エネルギー効率の高い冷却のため、熱変色ポリマーを開発 米ライス大学

Photos by Jeff Fitlow/Rice University

米ライス大学は2024年8月28日、同大学と香港中文大学の共同研究チームが温度変化に応じて透明度を調整するスマート素材を開発したと発表した。耐久性、透明度、反応性の面で類似素材の性能を凌駕しており、室内空間の冷却におけるエネルギー効率を大幅に向上させる可能性がある。

冷房は、世界のエネルギー使用量の7%、二酸化炭素排出量の3%を占めているという。近年、各地で気温が記録的に上昇し、世界的に熱波が頻発しているため、室内温度をより効率的に保つ手法の必要性が増している。光を通しながら熱を遮断する素材で窓をコーティングすることは、この問題解決へのひとつの手段となる。「サーモクロミック(Thermochromic)材料」と呼ばれる熱に応答して色が変化する材料があるが、既存のものは高価で寿命が短いため、建物や自動車などに使用することは現実的ではない。

研究チームが開発した新しい塩添加ポリマーブレンドシステムは、この課題を克服し、エネルギー効率の高い室内空間冷却技術としてサーモクロミック材料を大規模に展開できる可能性がある。新しいサーモクロミック材料は、2種類のポリマーと1種類の塩を混合して合成している。温度変動に伴う透明状態と不透明状態の遷移をスムーズにするために、原料の組成が最適化された。

研究チームは、実験的手法と計算シミュレーションを組み合わせて、さまざまな環境や建築環境下で材料の挙動を調べた。例えば、世界各地の特定の都市でこの材料がどのように機能するかを評価し、大規模に展開した場合の潜在的な影響を把握した。その結果、このサーモクロミック材料は、日射調整効果が高いだけでなく、寿命が60年と推定され、耐久性にも優れていることがわかった。

「私たちが開発した材料は、有機成分と無機成分の両方を活用することで、短寿命や高コストといった従来のサーモクロミック材料の限界を克服しています」と研究チームは述べている。研究チームは、今回の研究成果はサーモクロミック材料の耐久性と性能、特にシンプルで実用的なシステムにおいて、新たなベンチマークを打ち立てるものだとしている。

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