電気自動車を充電する時間帯によって温室効果ガスの排出削減が可能に――太陽光発電が多い地域では昼間の充電が効果的

米マサチューセッツ工科大学(MIT)は、電気自動車(EV)を充電する時間帯によって、EVによる温室効果ガスの排出量を大幅に削減できることを示す研究を発表した。研究結果は、2020年11月26日付で『Environmental Science & Technology』に掲載された。

交通手段に関連する排出量は世界的に増加しており、現在、アメリカでの温室効果ガス正味排出量の約20%はセダン、SUV、ミニバンなどの軽量自動車が原因となっている。EV導入によってこれらの排出量を削減できる一方で、EV充電に使用する電力源に関連する排出量も考慮する必要がある。

今回の研究では、EV充電に使用する電源に関連した排出量削減について検討。地域ごとの充電パターンと外気温が自動車の燃費に与える影響を考慮に入れ、EVを充電する時間帯が排出量に大きく影響することを発見した。

研究チームは、1時間ごとの電力グリッドの変動と気温による燃費の変動を無視した、2つの一般的なEV排出モデリング手法の誤差の割合を計算した。その結果、これらの標準的な手法による誤差の合計は、30%の事例で10%を超え、アメリカのEVの内、半数が存在するカリフォルニア州では50%に達することが分かった。

この誤差を減らすために、2018年と2019年の1時間ごとの電力グリッドデータと、1時間ごとの充電、走行、温度のデータを使用して、アメリカ全体での60件のEV使用による排出量を推定した。次に、EV排出量を正確に推定するための誤差1%未満の新しい方法を導入してその正当性を検証した。この手法を研究者らは「平均日」法と呼んでいる。

例えば、太陽光発電が盛んなカリフォルニア州では、昼間にはより多くの太陽エネルギーが電力網に電力を供給しているが、EVを夜間に充電すると昼間に充電した場合よりも70%多い排出量が発生する。一方、ニューヨークでは、夜間電力の大部分を原子力発電と水力発電が占めているため、最適な充電時間帯はカリフォルニア州とは逆になり、EVを夜間に充電したほうが、日中に充電した場合と比べて排出量を20%削減することができる。

このような充電する時間帯による多大な影響を政策立案者に報告すれば、電力グリッドで再生可能エネルギーの比重が多い時間帯に充電した場合、料金を割り引くような電気料金を設定できる可能性があるとしている。

また、電力グリッド排出量と燃費の季節性を無視しても、年間EV排出量と充電する時間帯の影響を正確に推定できることが分かった。複雑な計算をしなくても正確に推定することができることから、この発見は、将来のEV排出シナリオのモデル化に有用な影響を与えるといえる。

研究チームは、2018年から2032年にかけてアメリカ南東部で事例研究を実施し、この地域での再生可能エネルギーの普及が将来のEV排出量にどのように影響するかを調べて、平均日法の有用性を実証するという。

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