東大、材料強度の源となる”転位の伝播阻害過程”の観察に成功

東京大学は2016年11月12日、変形を担う転位の伝播が粒界よって阻害される過程をリアルタイムで観察し、材料の強度が向上する根本的な要因、つまり”なぜ粒界が転位の伝播を阻害するのか”を明らかにしたと発表した。

変形を担う転位の伝播が粒界よって阻害されるため、結晶粒径が小さいほど材料の強度は向上する——ここまでは以前から知られていた。しかし、なぜ粒界が転位の伝播を阻害するのかは分かっていなかった。転位の伝播阻害過程は動的に進行するナノスケールの現象であることから、その様子を直接観察するのは困難だった。

そこで東京大学の研究チームは、透過電子顕微鏡(TEM)内で材料に力を加えながら観察を行う応力印加その場観察法の1つであるTEM ナノインデンテーション法を使用。ナノスケールの構造である転位と粒界の動的相互作用をリアルタイムで可視化し、粒界が転位伝播を阻害する起源の解明を試みた。

従来、粒界で結晶粒方位が変化することに起因して、粒界は転位の運動に対する”壁”として振舞うと考えられてきた。だが今回の研究によって、粒界に形成される特異な原子構造が転位をトラップする”落とし穴”として振舞うことが明らかとなり、この「落とし穴」の存在が転位の伝播を妨げることが分かった。

また研究チームは、構造の異なった複数の粒界に対して転位の伝播阻害過程を観察。その結果、構造が異なる粒界では転位伝播に与える影響も大きく異なることが明らかとなった。この研究結果は、粒界毎に材料強度に与える影響が異なるため、粒界方位・構造を制御して高強度材料を創製できるということを示唆しているという。

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