太陽エネルギーの93%を利用して海水から飲料水を製造する装置を開発

カナダのウォータールー大学は9月11日、同大学と香港理工大学の共同研究チームが、太陽エネルギーの93%を利用して海水から飲料水を製造する装置を開発したと発表した。

海水淡水化は、世界の人口と水消費量の急速な増加による水不足に対して、多くの沿岸国や島国の淡水利用に不可欠な技術だ。「国連世界水開発報告書2024」によると、世界でおよそ22億人がきれいな飲料水を利用できない状況にあり、淡水を生成する新技術の必要性が高まっている。

従来の海水淡水化技術は、海水を膜に通して塩を分離する方法であり、エネルギー集約的で運転上の問題が生じやすい。特に、装置表面に蓄積する塩に対して頻繁なメンテナンスを必要とし、連続運転を妨げる。

そこで、研究チームは、自然の水循環過程から着想を得て、樹木が根から葉へと水を運ぶ仕組みを模倣した装置を開発した。

同装置は、ニッケルフォーム表面上の多孔質ポリドーパミン層と熱応答スポロポレニン層から構成される。多孔質ポリドーパミン層は光熱変換と微小水路として機能し、熱応答スポロポレニン層は切り替え可能な水路のゲートとして機能する。太陽光を吸収して高温になると、熱応答スポロポレニン層は超疎水性状態になり、多孔質ポリドーパミンの微小水路に水を導き、蒸発過程を促進する。塩の蓄積によって低温になると、熱応答スポロポレニン層は親水性になり、バルク水を引き込んで蓄積した塩を逆流させる。

同装置は、閉鎖系で効率的に水を蒸発/凝縮させ、塩分の蓄積をなくす。従来の技術と異なり、メンテナンスなしに連続運転が可能だ。実験では、1平方メートル面積に照射された太陽エネルギーの93.9%を使用し、海水から1日に約20リットルの淡水を生成した。従来技術の5倍に相当する効率だという。また、持ち運び可能なため、淡水を入手しづらい遠隔地での使用に理想的だ。

研究チームは今後、同技術の大規模化に向けて、海上に配備可能な試作機をテストする予定だ。研究成果は2024年7月22日に『Nature Communications』誌に掲載された。

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