金の5倍の強度を持つ金箔、金ナノ粒子とセルロースの自発結合で作成

大阪府立大学は2019年1月25日、金ナノ粒子(AuNP)と植物由来セルロースナノファイバー(CNF)の自発結合を利用し、金の5倍の強度を持つ金箔を作成する技術の開発に、同大大学院工学研究科の椎木弘准教授らの研究グループが成功したと発表した。作成された金箔は、その金含有量が一般的な金箔の85%程度でありながら、金含有量13vol.%で金並みの導電性を示す。水で湿らせ貼り合わせるだけで接合や修復が可能であり、フレキシブル配線や電極への応用が期待できる。

椎木准教授らの研究グループは今回、水を媒介にAuNPとCNFを分散し、それぞれの分散液を混合させると、その混合分散液にて両者が自発的に結合することを発見した。特定のpH域にてCNFの表面電荷は0となり、AuNPは負のゼータ電位を持つため、両者は互いに反発し疎に結合するという。混合分散液ではAuNPは凝集せず、それ特有の赤色を呈する。結合の進行につれて、混合分散液では赤色の綿状構造体が形成され、やがて赤黒色の沈殿が生じる。攪拌すると再び分散し、赤色の分散液となる。その後、再び赤色の綿状構造体が形成され、最終的に沈殿する。研究グループは「上澄み液に赤色の着色が見られなかったことから、分散液中の全てのAuNPが水素結合を介してCNFに結合している」と推察する。

AuNP/CNFの分散液の色変化
a)混合後静置、b)攪拌後静置、c)分散液中におけるAuNPとCNFの結合の概念図

綿状構造体は、濾過するだけで簡単に溶媒と分離できる。濾過してから乾燥させると、フィルターメンブレンからAuNP/CNF複合膜を剥離することが可能だ。複合膜の色は、AuNPの分散状態に基づいた色を示す。複合膜はAuNP含有量5vol.%では絶縁性だったが、AuNPの増加と共に比抵抗率は減少し、13vol.%では金並み(2.9×10-6Ωcm)の導電性を示した。そのため、金箔における金使用量は約85%低減できる。電子顕微鏡で調べると、複合膜においてAuNPはCNFに沿って配列し、帯状に偏在していることが分かった。「少量のAuNPがCNFに効果的に配列され、複合膜中において導電経路が構築された」と研究グループは考えている。

作成した金箔は金板の5倍の引張強度を示した。湿らせた2枚の金箔の端を貼り合わせ乾燥させても、比抵抗率と引張強度に遜色はなかった。表面のAuNPとCNFが再び水素結合するため、金箔が修復されるからだ。この金箔を酸やアルカリ、中性洗剤水溶液に浸漬し30分間の超音波処理を施したが、金箔の崩壊やAuNPの溶出は見られなかった。研究グループは「AuNPとCNF間に形成される水素結合が非常に強いことが推察される」としている。

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