- 2025-2-13
- 技術ニュース, 機械系, 海外ニュース
- コーネル大学, プレート境界断層, 国際深海科学掘削計画(IODP), 地球深部探査船, 太平洋プレート, 学術, 巨大地震, 掘削プロジェクト, 日本海溝巨大地震・津波発生過程の時空間変化の追跡(Tracking Tsunamigenic Slip Across the Japan Trench:JTRACK), 東北地方太平洋沖地震, 津波

©JAMSTEC/IODP
米コーネル大学を中心とする国際研究グループは、2011年東北地方太平洋沖地震で生じたプレート境界断層を調査する掘削プロジェクトを完了した。地球深部探査船「ちきゅう」を用いて、水深7kmの海底から約1kmの地点まで掘削し、過去に掘削した観測井で検層と地質資料(コア)の採取を実施した。また、温度計も再設置した。コーネル大学のアシスタント・プロフェッサーであるPatrick Fulton氏は、「われわれの地質学的および水文学的な調査によって沈み込み帯の理解が深まり、巨大地震や津波に対するより適切な備えにつながるでしょう」と述べている。
この調査は国際深海科学掘削計画(IODP)の「日本海溝巨大地震・津波発生過程の時空間変化の追跡(Tracking Tsunamigenic Slip Across the Japan Trench:JTRACK)」プロジェクトの一環で、2012年に実施された掘削調査に続くものだ。このプロジェクトは水深7km地点から約1km掘削するという技術的課題に挑戦したもので、2012年以前にこれほど深い場所で、掘削や観測が行われたことはなかった。地震発生時、断層は最も浅い部分で50~60mも滑り、予想をはるかに超えて甚大な被害をもたらした津波が引き起こされた。研究者たちは、地震直後の断層の特性と状態を調査することで、重大な断層破壊が生じた原因と、なぜこれほどまでに予想が困難だったのかを解明しようと試みている。
2012年の調査で、地震発生時に断層で摩擦熱が生じたことで異常な熱信号が発生したことが明らかとなった。この興味深いデータは、断層が非常に弱いことを示している。また、余震の際に断層や亀裂が開き、そこに水が移動する様子が認められた。前回の研究からの12年間で、プレートは年間約10cm程度移動している。この移動はある地点で留まっているのか、断層にストレスが蓄積し始めてまた大きな地震が発生する可能性があるのか、研究チームはこれらの過程がどのように進んでいるのか知りたいと考えている。
2024年9月、総勢150名のチームが「ちきゅう」に乗り込み、再び日本海溝を目指した。熟練したチームでも断層に穴を掘る作業は容易でなく、特に困難を極めたのは、12年前と同じ掘削孔にドリルパイプを入れる作業だった。この作業は、エンパイアステートビルの頂上から、針の穴に糸を通すようなものだ。位置が決まると断層を900m以上掘り進み、亀裂を流れる流体と摩擦熱を測定するための超高感度センサーを内蔵した長期孔内計測システムを設置した。あとから観測データを回収できるように、装置は設計されている。
また、断層を掘削し物理検層データを回収した。このデータから、現在の地下の応力状態を知ることが可能だ。さらに断層帯と断層の下にある太平洋プレート、海溝に沈み込む前のプレートでそれぞれ地質資料を採取した。深海での作業は2024年12月に完了し、「今回の調査データから多くの研究論文が生まれることが期待できます」とFulton氏は述べている。
関連情報
Ultra-deep drilling reveals mysteries of Japan tsunami | Cornell Chronicle