超伝導を電圧でオンオフできる、「魔法の角度」をもった積層2Dグラフェンを作製

credit: David Steadman/University of Texas at Austin.

テキサス大学(UT)オースティン校を中心とする国際研究チームが、2層から成るグラフェンシートの各々の方向を、1.1度で正確に回転させると、近接する幾つかの電子エネルギー準位で、超伝導状態と絶縁状態が交互に生じることを明らかにした。小さな電圧変化で超伝導をオンオフできることを示唆するものであり、集積回路が小さな電圧変化により制御できるのと同じように、新しい電子デバイスとして活用できる可能性を持つものと期待される。研究成果は、2019年10月30日の『Nature』誌に公開されている。

グラフェンは代表的2D材料として活発に研究されているが、銅よりも高い導電性を持つだけでなく、グラフェンをベースとして超伝導体を作製できることも知られている。2D材料の電子構造を研究するUTのAllan MacDonald博士は、2011年に1方の層が他方の層に対して少しだけ回転している2層の2D材料において、電子の運動が突然100倍以上も遅くなるという、異常な現象が生じることを予測した。

これまで、この約1.1度という「魔法の角度」を持った積層2D材料を実際に作製することが難しいこともあって、あまり注目されてこなかったが、MacDonald博士と共同研究を行うUTのEmanuel Tutuc博士の研究チームが、正確な回転角度を持った積層2D材料を作製する、信頼性の高い手法を考案した。

まず、大きな薄膜を作製し、これをミクロン・サイズの2片に分割した後、粘着性のある半球型のハンドルを用いて、1片を持ち上げて他方の上に乗せるというものだ。こうして作製された魔法の角度を持つ積層2D材料をベースとして、アメリカ、スペイン、中国、日本の研究者を含む共同研究により、2層グラフェン材料の電子構造を詳細に分析した結果、絶縁性と超伝導性の出現パターンは、予想されていたよりも更に複雑であることを見出した。さらに、幾つかの近接した電子エネルギー準位において、超伝導状態と絶縁状態が交互に生じ、小さな電圧変化で超伝導をオンオフでき、将来の電子デバイスに発展する可能性を確認した。

研究チームは、膨大な数の電子を取り入れたコンピュータ・モデルにより、エネルギー準位を計算し電子構造を解析するにあたり、テキサス先端コンピュータセンター(TACC)のスーパーコンピュータStampede2を用いている。「ほとんどの成果は、この高性能コンピュータなしでは不可能だった」と、MacDonald博士は語る。「計算結果は、ラボ実験と比較して、しばしば反直観的で誤りのように見えるが、未知の領域で探索すべき方向性を示してくれる」と、スーパーコンピュータによる理論計算の重要性を力説している。

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