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切り紙と折り紙の技法を組み合わせて1枚の紙から多様なメタマテリアルを作成 米プリンストン大学

Photos by Sameer A. Khan/Fotobuddy

米プリンストン大学は2025年1月21日、同大学を中心とした研究チームが、切り紙と折り紙の技法を使って、1枚の紙から形状や幾何学的構造に基づく独自の特性を示すメタマテリアルを作成したと発表した。このメタマテリアルで作られた3次元構造体は、トポロジカル極性や非相反性といったメタマテリアル機能を備えている。

メタマテリアルとは、構造を工夫することで自然界にある物質を超える機能を示す物質のことだ。簡単な例としては、紙製の卵パックが挙げられる。食用卵を複数入れて持ち運びする際に使われる紙製の卵パックは、その構造により平らな厚紙1枚よりも高い強度を持つ。切り紙メタマテリアルは、これまでに3Dプリンティング、切削、鋳造など、さまざまな方法で製造されてきた。

今回の研究では、切り紙と折り紙という古くからある2つの芸術様式から得られる知見を組み合わせた。切り紙と折り紙の概念はこれまで別々に提示されることが多く、両方の分野を組み合わせるのは、1枚の紙を切って折るというように単純なことではないという。

研究チームは、典型的な折り紙のパターンである折り方によって、切り紙による部品を補完するという、相乗作用のある「folded kirigami(折り畳んだ切り紙)」を提案した。まず、切り紙の技法を利用して、1枚の紙を多数の穴を持つ複雑な表面に変化させた。このような表面は、数学者が「種数の大きい曲面」と呼ぶものだ。次に、折り紙をベースとする折り畳み技術を応用して、紙を3次元構造に変えた。

切れ目と折り目のバランスによって、紙でできたヒンジ状の可動部でつながった形状の間にネットワーク効果を作り出せる。これによって、圧力などの外力に反応できるよう調整可能な3次元構造を作ることが可能になった。例えば、ある方向では硬いが、別の方向では柔軟である構造を生み出せる。単にひねるだけで、構造体の形状が変化するにつれてその構造体の柔軟性を変えられるのだ。

また、この構造を利用して、ある方向に流れを誘導する能力である極性を導入する形状を作ることができる。この新しいメタマテリアルは、極性を生み出すために電磁場ではなく形状を利用している点が特徴だ。

今回の研究では、正方形の列とひし形の列が交互に並ぶ構造の切り紙で、非相反的な機械的応答が可能だったことや、カゴメ格子構造の切り紙において、極性状態と無極性状態との間でのトポロジー位相切り替えが可能な再構成性が確認されたことなど、多数の新しいメタマテリアル機能を実証した。

この研究で示された折りたたんだ切り紙は、その機械的性能の多様性、精度、信頼性において際立っているという。また、1枚の紙だけでできているため、作業がしやすく、製造上のミスが起こりにくいという利点もある。

今回の研究の大半は、切れ目と折り目を組み合わせたパターンの背後にある基本的な数学を探求し、望ましい特性を持つメタマテリアル作成に使用できるアルゴリズムを解明することにあったが、今後、さらなる研究により、この技術を使って音を誘導する幾何学的図形の回路を製作できる可能性があるという。最終的には、この構造を光学や半導体に利用することもできると考えられる。

この研究は、2024年11月8日付で『Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS:米国科学アカデミー紀要)』に掲載された。

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