- 2025-3-6
- 機械系, 製品ニュース
- Aether clock OC 020, イーサクロック, ストロンチウム光格子時計, 一般相対性理論, 光格子時計, 原子時計, 島津製作所, 重力ポテンシャル測定, 魔法波長

島津製作所は2025年3月5日、18桁精度に相当するストロンチウム光格子時計「Aether clock OC 020(イーサクロック)」の受注を開始した。2024年11月に装置体積250Lの小型化に成功した装置で、世界初となる光格子時計の商用機となる。希望販売価格は5億円(税込)となっている。価格はシステム構成により変動する。
原子時計の一種である光格子時計は、現在の「秒」の定義の基準となっているセシウム原子時計に対し、100倍以上の精度を有する。イーサクロックの18桁精度は、100億年に1秒の誤差に相当する。従来の光格子時計は煩雑な調整業務が頻繁に必要になるが、イーサクロックは作業者の負荷を大幅に低減できる。
イーサクロックは、光格子中にレーザー冷却された原子を捕獲し、低温に冷却した恒温槽の中で時計遷移を高精度に分光する。時計分光用真空槽を含んだ物理パッケージ、光共振器、レーザー/制御システムを搭載する。
小型化により、移設が容易で、一般相対性理論を利用した重力ポテンシャル測定にさまざまなフィールドで応用できる。例えば、数cm精度のプレート運動や火山活動による地殻の上下変動の監視、数時間から数年かけて起こる地殻変動(標高変化)の精密な観測、超高精度な標高差計測/測位システムの確立など、各国の標準機関や大学、研究所などに設置することで時間基準以外にも利用できる。

光格子時計の模式図
光格子時計は、原子(球状)がレーザー光の干渉で作られた微小空間(卵パック状の光格子)の中に捕獲されている。光格子は、「魔法波長」と名付けられた特別なレーザー波長で構成される。

光格子時計の物理パッケージ
(A)磁気シールドを付けた外観
(B)磁気シールド内に設置された真空槽
小型物理パッケージは、空間的な均一磁場を発生させるためのコイルや黒体輻射シールドを真空槽内に組み込む。

光格子時計のレーザー/制御システム
(フロントカバーを取り外した状態)コネクター類はフロント部に集約し、メンテナンス性、運用性を向上させている。

レーザー/制御システムの機能分割したモジュール構成。
各機能は、機能ごとに分割した交換可能なモジュール構成として設計することで、運用時の保守性を高めている。