- 2017-5-22
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- コンピューター, ナノサーマルメカニカルデバイス(熱ダイオード), ネブラスカ大学リンカーン校, 代替エネルギー
ネブラスカ大学リンカーン校の研究チームが、熱をコンピューターの代替エネルギー源とする方法を編み出した。機械材料工学科のNdao助教授と大学院生のMahmoud Elzouka氏の連名の論文が、『Scientific Reports』誌3月号に公開されている。
コンピューターにおいては、どのような方法で冷却し、過熱やシステムのシャットダウンを防ぐのかは誰もが知る最大の課題だ。これを解決するため、この研究チームは熱に抗うのではなく、熱をコンピューターの代替エネルギーとして利用する方法として、ナノサーマルメカニカルデバイス、すなわち「熱ダイオード」と呼ぶべきデバイスを考案した。このデバイスは、華氏630度(摂氏332度)に達する温度でも機能し、将来的には華氏1300度(摂氏704度)での作動を狙っている。
「熱と電気はどちらもエネルギーのキャリアであり、類似性がある。もしも熱を電気のように制御してコンピューターに応用できれば、もうオーバーヒートに悩まされることもなくなる」と、機械材料工学科のSidy Ndao助教授は説明する。
「熱をエネルギーとするコンピューター、すなわち熱コンピューターと呼べるものがあれば、例えば宇宙探査や地核探査、石油掘削などのシーンで有効に利用できるだろう。これまでは不可能だった場所で、リアルタイムで計算しデータ処理を行うことができるようになる」と、Ndao助教授。さらに熱ダイオードは、これまで見逃してきたエネルギー源も活用できる。「現在、アメリカで消費されるエネルギーのほぼ60%は、無駄な熱として消散している。熱ダイオードを実用化し、この余剰熱をエネルギー源として再利用できれば、無駄を減らし、エネルギーコストを低減できる」と語っている。
Elzouka氏によれば、研究チームは特許出願をしているが、次のステップはこの熱ダイオードを改良し、性能を向上させることだという。「もし、高効率を達成し、コンピューターとして機能することを示せれば、コンセプトの実証になる。そうなれば(熱コンピューターを活用する)未来を思い描くことができる」と、Elzouka氏は語っている。