グラフェンとは?
グラフェン(graphene)とは、原子1つ分の厚さの非常に薄い炭素素材。2004年にグラファイトの塊にセロファンテープを貼り付け、そっとはぎ取ることで抽出法が発見された。グラフェンはあまりに薄いので2次元と見なすことができ、1mmの厚さのシートにするには300万枚も重ねる必要がある。極薄の炭素シートは軽量で、シリコンの100倍の電気伝導率、鉄の100倍の強度、6倍の弾性を備える。規則的な六角形の安定した構造を持ち、ほとんど透明だ。電子物性/機械的物性/化学的性質に驚異的な特徴があるため、世界中で実用化に向けた研究が進められている。非常に高速/低消費電力のトランジスタの実現など、LSI(大規模集積回路)の次世代チャネル材料として、または銅をはるかに凌駕する電流密度耐性を備えるため、大電流を流せる電気配線にも利用できると期待されている。他にも折り曲げ可能なディスプレーやスマートフォンのタッチパネル/LEDの放熱モジュール/スマートフォンの放熱シート/高速半導体の放熱促進材料/電磁波遮断材料/静電気の帯電防止材料/燃料電池の電極材料/導電インクなどへの応用が見込まれる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の予測によると、グラフェンの世界市場規模は2013年の13億円から2030年には1000億円に拡大すると見られている。
グラフェンを取り扱う企業は?
高品質なグラフェンを低コストで生産する技術開発では、日本の大学と民間企業のコラボレーションが世界的に先行している。中でも大阪ガスと、東京大学の新しい生産技術の特許権を得たADEKAが牽引する。大阪ガスは、従来法と比べて2倍の生産性を実現し、キログラム当り1万円以下と販売価格を半分に引き下げる技術を開発した。ADEKAは、東京大学の開発したグラフェンの製造技術に関する特許の独占ライセンスを取得し、2015年10月には本格的なサンプル提供を開始したと発表している。
パナソニックはグラファイトシートの薄くて柔軟、高い熱伝導の特徴を活かし、バッテリー/ウェアラブルデバイス向けの高性能断熱シートや、スマートフォンの蓄熱材、車の座席シートなど、熱問題のソリューション製品を提供している。またイビデンは、シリコン半導体関連や化合物半導体関連の黒鉛部材としてグラファイト製品を供給する。他にも多層グラフェンを商品化したカネカ、グラフェンの基盤技術開発を専業とするグラフェンプラットフォームと提携した日写印なども注目されている。
グラフェンに携われる求人は?
グラフェンに限定した求人は、一部のグラフェン関連部品の生産業務以外ほとんど見つからない。ナノ炭素材料全体としても実用化は限定的で市場規模も小さいため、現在のところ実用化に向けた研究段階にあるようだ。NEDOによる実用化加速に向けた研究への助成などが実施されているため、炭素材料関連の知識のある研究者にはニーズがあると思われる。また、高品質なグラフェンを低コストで生産できる技術開発がされたことにより、実用化が加速化するとともに、ナノ炭素関連市場での求人の増加が見込まれる。