- 2017-7-5
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- Daniel Bregante, David Flaherty, プラスティック, 米イリノイ大学
米イリノイ大学の研究チームが、金属イオン触媒と過酸化水素を活用したプラスティック生産についての重要な研究成果を発表した。今後想定されるプラスティック製造設備の更新を見据え、従来から利用されている環境負荷の高い有機過酸化物や塩素系酸化剤を使わず、CO2の排出も抑える次世代の製造プロセスの構築を提案するものだ。
多くのプラスティックや樹脂は、石油などの化石燃料から生成されるオレフィンから誘導されるが、オレフィンは化学酸化剤を使ってプラスティックや樹脂の前駆体であるモノマーに変換されるとういうプロセスが必要になる。
研究チームのひとり、イリノイ大学化学生物分子工学科大学院生のDaniel Bregante氏は、「オレフィンから前駆体モノマーを製造するプロセスの多くは、環境に有害な有機過酸化物や塩素系酸化剤を使用し、腐食性のある塩素やCO2などを大量に排出する」と、現在の製造プロセスの問題点を指摘する。
そこで研究チームは、酸化剤として、塩素やCO2ではなく水しか排出しない、環境負荷が小さな過酸化水素を使うプロセスに注目した。オレフィンと過酸化水素は、スポンジ状の微細空間をもつゼオライトを通過し、この微小空孔部分に存在する遷移金属のイオンが触媒として化学反応を促進する。
研究チームを率いる化学生物分子工学科教授のDavid Flaherty教授は、「このプロセスは数十年も使われてきたが、金属イオンがどのように過酸化水素を活性化するか、また、どの遷移金属が最も有効か、などの詳細はこれまでわかっていなかった」と語る。
「この反応の詳細を解き明かすことにより、従来からの古典的な製造方法を、環境に配慮したエコプロセスに転換することができる」とFlaherty教授。「現在、多くのプラスティック製造設備がその寿命に近づきつつある。新たに建設される製造インフラは、この改善された方法をベースとした、新しい環境に配慮したものになる可能性がある」と、その研究の狙いを明らかにしている。
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