ジョージア工科大学の研究者チームは、摩擦による静電気から発電するナノデバイスの研究で注目を集めている。その研究チームが今回さらに一歩進めて、太陽エネルギーと摩擦エネルギーの両方から同時に発電する織物を開発する道を切り開いた。
同研究チームは、2種類の発電方式を1つの織物に組み込むことで、スマートフォンやGPSなどのデバイスを動かす電力を供給できる衣類を製造する可能性を見出したという。研究の詳細については、『Nature Energy』に9月12日からオンライン公開されている。
ジョージア工科大学材料科学科のZhong Lin Wang教授は今回の研究成果について、「このハイブリッド発電織物は、エレクトロニクス・デバイスを野外で充電する斬新な手法を提供できます」と語る。さらに、「この織物は、非常に柔軟で軽量な上に通気性があり、さまざまな用途に使えます」という。
Wang教授らが開発した摩擦電気ナノ発電デバイスは、ある材料が他の材料と接触して摺動するときの摩擦により発生する静電気を利用。この摩擦帯電効果を静電誘導と組み合わせ、回転や滑り、振動などの力学的運動から電力を発生させる。つまり、風力や人間の動きを生かして、少量ながら発電できる。
研究チームはこの織物を作るに当たり、軽量の高分子繊維から作ったソーラーセルと、同じく繊維状の摩擦電気ナノ発電デバイスを用いた。商用の織り機で両者を織り込み、さらに毛糸と編み合わせることで、厚さ320μmの新しい織物を作製した。「この織物はさらに、テント、カーテン、衣服に織り込めます」とWang教授は語る。
この織物の骨組みには、安価で製造できる上に環境に優しい汎用の高分子材料を使用。Wang教授によると、電極などの電気部品も低コストのプロセスで製造でき、大量生産も可能だという。
研究チームは実験のために、事務用紙ほどのサイズの織物を作り、小さなカラフルな旗のように棒先に取り付けた。そして、くもった日に車を走らせ、車窓からこの旗を風になびかせたところ、明確な電力が発生したことを確認したという。さらに、4×5cmの織物片を用いた発電測定を実施し、太陽光と力学的運動によって2mFの商用コンデンサを1分間で2V帯電させられることも確認した。
初期テストでは、この織物は手荒い使用を繰返しても問題が起きなかった。だが、研究チームは今後長期の耐用性についても調査する予定だ。次のステップでは、電気部品を雨や湿気から守るための適切なカプセルを開発することを含めて、産業用途に向けた織物の最適化の研究を続けるとしている。