過冷却した液体中の分子構造は乱雑ではない――東大、共融点近傍でのガラス形成の原因解明

正四面体構造の度合いと、液体の中の結晶前駆体(結晶的な方位秩序の度合い)を示した図。

東京大学は2018年5月16日、2種類の結晶と液体の三相が共存する三重点や共融点近傍でガラスが形成されやすい原因を、理論および数値シミュレーションにより解明したと発表した。

2種類の結晶と液体の三相が共存する、1成分液体の三重点(物質の三つの異なる相が共存する点)や2成分系の共融点(液相と二つの固相が共存する点)の近傍では、ガラスが形成されやすいことが経験的に知られている。しかしその理由は解明されていなかった。

今回の研究では、これまで乱雑で一様と考えられてきた液体の構造が、融点以下では、温度の低下とともに何らかの方向秩序を持つ傾向があることが明らかとなった。これは、液体の構造と結晶の構造が似ていると結晶化しやすく、一方大きく異なると結晶化が阻害されてガラスが形成されやすいという、極めて自然な原理があることを示唆するものだ。

また、三重点や共融点付近では、2種類の対称性の異なる結晶が競合する結果、液体の構造が結晶に近い構造をとれず、液体と結晶の構造の差が最大化されるため、液体/結晶の界面エネルギーが大きくなり、結晶化が起きにくくなる。このことが、三重点や共融点近傍での高いガラス形成能のメカニズムであることが明らかとなった。

今回の成果は、結晶化とガラス化の間に深い関係があることを示すとともに、応用においても、様々な物質のガラス形成能を制御する新しい道を拓くものだという。

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