- 2018-6-12
- 機械系, 自動車, 転職・キャリアアップ
- 3Dプリンター, CPS(Cyber Physical System), IoT, インダストリー4.0, 人工知能(AI), 工場自動化(FA:ファクトリーオートメーション)
~ 工場自動化(FA)の最新事情をエンジニアリングの分野別に考える ~
本記事は、エンジニア専門の人材紹介会社メイテックネクストのキャリアコンサルタントへの取材を通じて、工場自動化(FA:ファクトリーオートメーション)の最新事情をお伝えしていく連載記事です。
前回まで「クルマ技術の今」と題して、エンジニア市場の動向から見る自動車業界の現状をお伝えしてきました。今回から「工場自動化(FA)」をテーマにして、エンジニアのキャリア形成に役立つ情報をお届けしていきます。
第1回目となる本記事では、工場自動化とは何か、工場自動化に注目すべき理由など、メイテックネクストの梅津 太一マネージャーに話を伺いました。(執筆:中嶋嘉祐)
――製造業エンジニア市場において、「工場自動化」への注目度が上がってきていると伺いました。どのような変化が起きているのでしょうか。
[メイテックネクスト 梅津 太一氏]数年前から製造業にかかわる新たな潮流を、「インダストリー4.0」というキーワードで表現するようになってきました。
「インダストリー4.0」は広い範囲の意味を持つ言葉で、デジタルツイン、IoT、3Dプリンターなど、さまざまな概念・技術を含みます。その中の1つに、CPS(Cyber Physical System)を活用して、製造ラインに人手が入らずとも製品が完成する工場の「完全自動化」があります。
ただ、これまでにも“完全”ではないにせよ、日本の各メーカーは工場自動化を推進してきました。「自社工場は十分に自動化できている。『インダストリー4.0』だからといって、製造ラインを劇的に変える必要はない」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
実際に少し前までは、「インダストリー4.0に対応できるエンジニアを採用したい」といったご相談がメイテックネクストに届いたとしても、求める人物像を詳しくヒアリングしていくと、「最新の生産技術に詳しいエンジニアよりも、歩留まりを改善した実績を持つエンジニアが欲しい」という要望に落ち着くことがほとんどでした。完全自動化よりも、工程改善が求められていたのです。
ところがここに来て、外資系などの大手メーカーの一部によって、完全自動化を見据えた最先端の工場が稼働するようになってきました。次世代型工場の利点を先行企業が目に見える形で示したことで、自社工場を革新するために、工場自動化に詳しいエンジニアを採用する動きが顕在化しつつあるのです。
これまでの工場自動化と、最新の工場自動化。どこが違うのか
――従来の工場自動化と最先端工場の自動化、どんな違いがあるのでしょうか。
[梅津氏]前述のとおり、国内メーカーの多くはこれまでにも、加工・組立・検査などのさまざまな工程で、機械系エンジニアを中心として自動化を推進してきました。
今はそこからさらに一歩進み、“完全”自動化とまではいかなくても、電気・制御・IT系エンジニアも加わって、IoTの導入によって次世代型工場の土台を整えようとする企業が増えてきています。
工場におけるIoT活用に積極的な業界としては、自動車や医療機器などがあります。製造コストを限界まで下げたい植物工場、クリーンさが求められる半導体や電池といったものを生産する工場なども、IoTの導入に意欲的です。
製造現場にIoTを導入して、各装置から大量の稼働データを収集して分析するようになれば、「この装置の温度・駆動音に異常が表われたから、近いうちに不具合が起きるかもしれない」と検知できるようになり、未然に対策を打てるようになります。
“完全”工場自動化で生産技術エンジニアは不要になるのか?
――「自動化」と聞くと、「将来、自分の仕事が失われるのでは」と懸念するエンジニアもいると思います。
[梅津氏]人工知能(AI)をめぐる議論にも当てはまることですが、「“完全”工場自動化が現実になったら、生産技術エンジニアは不要になるのではないだろうか」と心配する声もあるでしょう。
確かに、組立工や検査工など、生産ラインで直接作業する仕事は減っていくかもしれません。けれど、工場全体の生産性を考えられる生産技術エンジニア、“完全”工場自動化の仕組みを導入・改善できる生産技術エンジニアに対するニーズは、今以上に増加していくことでしょう。向こう10年で“完全”工場自動化を見据えたエンジニアへのニーズが高まるとしたら、次の20~30年は“完全”工場自動化を改善して効率を上げられるエンジニアが求められるのではないでしょうか。
これから、“完全”工場自動化に向けて動き出すメーカーが増えるのは間違いないでしょう。そうした状況においても、10年先、20~30年先に求められるエンジニアになるためには、どんな心構えを持って日々の業務に取り組めばいいのでしょうか。
本連載では次回以降、機械系と電気・制御・IT系の2分野に分けて、工場自動化にかかわるエンジニア市場の最新事情、今後、市場価値を上げていくために求められるエンジニアの資質・スキルといった情報をお届けしていきます。
梅津 太一(メイテックネクスト 紹介事業本部 CAグループマネージャー)
<メッセージ>
企業向け営業担当として、中小から大手までメーカーに対する採用コンサルティングを担当、その後キャリアアドバイザーとしてエレクトロニクスグループ、メカニカルグループを経て現職。