- 2018-8-20
- 化学・素材系, 技術ニュース, 電気・電子系
- Li-Mgデュアルイオン電池, リチウムイオン電池, 協奏的相互作用, 多価イオン拡散, 定電流充放電実験, 東京工業大学, 東北大学, 第一原理計算, 組成分析, 電位走査
東北大学と東京工業大学は2018年8月17日、蓄電池の正極中での多価イオン拡散が、一価イオンのLi+と多価イオンであるMg2+の協奏的相互作用により、促進されることを発見したと発表した。
現在の主要な蓄電池であるリチウムイオン電池は、その性能が理論的な限界に近づきつつあり、より高性能な蓄電池の実現が求められている。中でも、Mg2+、Zn2+、Al3+などの多価イオンをキャリアとする蓄電池系は、リチウムイオン電池の性能を凌ぐ可能性のある次世代蓄電池として注目されている。しかし、これらの多価イオンは、正極物質中を移動する速度が遅く、電極反応が進みにくいため、適切な電極材料の開発が遅れていた。
そこで、研究グループは、一価イオンのLi+と二価イオンのMg2+を同時に利用するLi-Mgデュアルイオン電池を提案。実験と理論計算の手法を併用し、同電池のLi+とMg2+の拡散挙動を調査した。
電位走査、定電流充放電実験や組成分析の結果から、放電時の初期にはLi+が優先的に正極に収容され、Li+が一定量収容されると、Mg2+の収容が促進され始めることがわかった。これは、Mg2+の拡散を妨げる拡散障壁を低減させたことを意味するという。
さらに、実験から得られた知見に基づき、第一原理計算を用いて、拡散過程を解析。その結果、後に続いて収容されるMg2+は、先に収容されたLi+と一定の距離(~4Å)を保ち、ペアで拡散経路を移動することで、拡散障壁が大幅に低減されることが明らかになった。
研究グループは、この成果は、固体中のイオン伝導機構の理解を深めると共に、正極材料の開発に新たな指針を与え、多価イオンを用いた蓄電池系の実用化を進展させるとしている。また、蓄電池分野に限らず、燃料電池固体電解質やイオン伝導体などの分野への拡張も期待される。