スタンフォード大の研究チームは、太陽光によって発電すると同時に、熱を直接大気に放出してビルの温度を下げることができる屋上設置型デバイスを開発している。研究成果は2018年11月8日付けの『Joule』誌に掲載されている。
スタンフォード大学の電気エンジニアであるShanhui Fan教授が率いるチームは、上面が一般的な半導体材料の太陽電池セルで構成され、底面は冷却装置として機能する2層構造の太陽電池パネルを開発している。特徴的なのは底面側の層で、ビルの屋根から熱を吸収して、放射冷却として知られるプロセスによって大気へと放熱することだ。
一般的に放射冷却は、物体が赤外線を放射することで温度が下がる現象だが、ビルの屋根のような物体に対しては、大気が「厚手の毛布」のように働くため、熱の大部分はビルの近傍にトラップされてしまい、効果的な冷却は起こらない。
Fan教授は過去の研究で、ビルから放射される熱を特定の赤外波長へと変換することで、まるでこの毛布に穴をあけるように大気に熱を放射することができる材料を開発している。そこで今回この材料を使用し、熱を大気に逃がして建物内の空調に必要となるエネルギーを節約することができるような、太陽電池パネルの底面層を作成した。
実験を担当したポスドクのZhen Chen氏は、パイ皿ほどの直径の試作デバイスを作成し、スタンフォード大の建屋の屋根に設置して温度分布を測定した。その結果、太陽光を吸収する上面層の温度は屋根直上の空気よりも当然高くなっていたが、デバイスの底面層は屋根直上の空気よりも、はるかに温度が低いことが確認できた。
但し、今回作成した実験デバイスの上面パネルからは、赤外線の放出を阻害する可能性のある金属箔が除かれていたため、実際には太陽電池として発電することが出来ない。研究チームは、放射冷却用レイヤーと組み合わせることで金属箔が不要となる太陽電池セルを設計中だ。Fan教授は、「発電と冷却が同時にできる実用的なデバイスも作れるだろう」と、新たなデバイスの完成に期待を寄せている。
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