自己発電し、洗えるウェアラブルディスプレイモジュール技術を開発

ファッションとITを融合させ、心拍数や体温といった生体情報の収集をはじめ、様々な分野への応用が期待されるスマート衣料。市場の拡大が見込まれ、繊維メーカー各社が開発にしのぎを削っているが、衣料品であれば洗濯ができるものと考えるのは当然だろう。しかし、スマート衣料には、電源をどうするかということと、デバイスを誤動作させる透湿性が問題となる。これらの課題の克服を目指して韓国科学技術院(KAIST)は、電源を必要とせず、洗濯のできる布地で出来たディスプレイモジュールの技術を開発した。

KAIST電気工学部のKyung Cheol Choi 教授と彼のチームは、布地の上にポリマー太陽電池(PSC:Polymer Solar Cells)と有機発光ダイオード(OLED:Organic LED)を組み合わせたウェアラブルディスプレイモジュールを作った。PSCはウェアラブルとオプトエレクトロニクスアプリケーションの次世代の電源として最も有望な候補のひとつであり、OLEDはミリワットで動作する低消費電力デバイスだ。これらは共に、水分と酸素に対して非常に弱いという弱点があり、カプセル化によるバリアが欠かせない。従来からのカプセル化バリアは通常の環境では十分だが、水が豊富な環境下ではその特性が失われてしまうため、雨の中や洗濯の後でも使えるウェアラブルディスプレイの商品化の妨げとなる。

研究チームは、原子層沈着(ALD:Atomic Layer Deposition)とスピンコーティングを使って、洗濯しても特性が失われず、デバイスを保護できるカプセル化バリアを開発した。この技術を使って、布地の上に形成されたウェアラブルディスプレイモジュールは、10分おきに20回洗浄した後も、特性が変化しなかった。また、カプセル化されたデバイスは3ミリの小さい曲率半径でも安定的に動作し、最終的に、30日間にわたって曲げ応力と洗浄の両方を受けた後でも特性の劣化を示さなかった。

Choi教授は、「通常のウェアラブル電子デバイスに使われるプラスチックの代わりに、毎日着る布地を使うことで、洗濯できるウェアラブル電子モジュールを実現したといえる。我々はウェアラブルテクノロジーの取り付け可能な形状の限界を越え、布地の上に構成できる『真の意味のウェアラブルディスプレイ』への道を開いたと信じている」と述べている。

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True-meaning wearable displays: Self-powered, washable and wearable

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