宇宙空間における約10ヶ月間の木材試験体の曝露実験が完了――木造人工衛星に使用可能であることが判明 京大と住友林業

京都大学および住友林業は2023年5月16日、ともに2022年3月より取り組んできた「国際宇宙ステーション(ISS)での木材の宇宙曝露実験」において、約10ヶ月間にわたる宇宙空間での木材試験体の曝露実験が完了したと発表した。

同実験で用いた試験体は、地上での各種物性実験を経て木造人工衛星「LignoSat」に用いる最終候補として選定したもので、ヤマザクラ、ホオノキ、ダケカンバの3樹種となっている。

宇宙曝露した木材試験体

同試験体は、2023年1月に地球に帰還した。京都大学および住友林業は2023年3月に木材試験体を受理し、外観や質量などを測定する1次検査を実施した。

目視とマイクロスコープにより同試験体を外観測定したところ、いずれの樹種においても割れや反り、剥がれ、表面摩耗といった劣化が見られなかった。

宇宙曝露後木材試験体(ホオノキ)拡大写真
左:宇宙曝露試験体 右:宇宙未曝露試験体

また、宇宙放射線や宇宙空間の原子状酸素が木材にぶつかることによる表層の消失や、化学変化、分解による質量変化の程度を検証すべく、木材試験体の宇宙曝露前後での質量変化を測定した。含水率の影響を補正した結果では、ほぼ質量が減少していないことを確認している。

加えて、3樹種間での劣化の差もみられなかった。そこで共同研究チームは、地上で実施した加工性の高さや寸法安定性、強度などに関する各種試験の結果も考慮し、ホオノキを木造人工衛星に用いることを決定している。

同研究チームは、2023年5月に元素分析、結晶構造解析や強度試験といったより詳細な分析を開始する。木造人工衛星の打ち上げおよび運用開始は、2024年2月以降を予定している。

京都大学は、今回の曝露試験のデータと1号機の運用データを用いて、以降計画を進める2号機の設計や2号機で計測を検討するデータの基礎資料とする。

住友林業は、同試験体の今後の詳細分析により、ナノレベルの物質劣化の根本的なメカニズム解明を図る。解明結果は、高耐久木質外装材などの高機能木質建材や木材の新用途開発に役立てる。

関連情報

世界初、10か月間の木材宇宙曝露実験を完了~木材用途の拡大、木造人工衛星(LignoSat)の打上げを目指して~ | 京都大学

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