東京農工大学は2019年4月15日、オーク製作所およびテクノリサーチと共同で、遠隔からのマイクロ波照射による無電極発熱ランプの急速加熱技術を開発したと発表した。
加熱処理装置は多くの製造現場で利用されているが、従来のヒーター線を使った装置は、大きな電力が必要であったり、電気配線とヒーター線の接続部に断線が生じやすかったりする問題があった。
東京農工大学らの研究チームは、カーボン粒子を石英管にアルゴンガスとともに封入した無電極ランプ「カーボン・ヒーティング・チューブ(CHT)」を開発。このCHTにマイクロ波を照射すると、カーボン粒子がマイクロ波を吸収して発熱する。200Wの電力で1279℃まで加熱されて均質な強い光を放つ。
CHTには電極がなく配線も必要ないために従来のような断線などが発生せず、耐久性に優れる。また、配線を通じた熱の発散も生じないために、従来よりも省エネルギーだという。また、従来のランプやヒーターに用いられてきた高価なレアメタルが不要なため、製造コストを削減できる。
今回はさらに、CHT使った半導体急速加熱装置を試作開発した。この加熱装置は、CHTを収めた導波管の上下からマイクロ波を照射して効率良くCHTに吸収させる。赤外線温度計によってリアルタイムで測定し、発振器のマイクロ波出力を制御する温度調節機能も搭載した。
この装置を使って非晶質シリコン薄膜試料の加熱試験を行ったところ、試料全面に渡っての均質な結晶化と、レーザー結晶化膜に匹敵する0.92の高い結晶化率を持つ結晶化膜の形成に成功した。
今回の開発によって、新しいタイプの高効率発熱ランプの開発や、製造装置コストやランニングコスト、メンテナンスコストを抑えられる加熱装置の開発が期待できるという。