大阪大学は2019年10月31日、同大大学院基礎工学研究科大学院生の神野崇馬氏と木虎秀二氏、土岐博特任教授、阿部真之教授の研究グループが、電気・電子回路内に発生する電磁ノイズ現象を定量化するための理論を考案し、その発生メカニズムを解明することで、電磁ノイズが発生しない回路構造を理論的に導出することに成功したと発表した。
電磁ノイズは電子機器の内部で発生し、誤動作や温度上昇など問題を引き起こす。回路が周りの導体(環境)と電磁干渉するために発生するが、電磁干渉は人の目には見えないため発生原因の特定は難しい。このため、それらの対策の多くは熟練技術者の経験に委ねられているのが現状だ。そこで研究グループは、電磁ノイズの発生メカニズムの物理的な解明を試みた。
今回の研究では、電磁ノイズ現象を記述するために、電気回路を信号の往復路である2本の導線で表し、環境を1本の導線で表した3本線回路を用いた。その結果、信号を表すノーマルモードと、電磁干渉を表すコモンモードの定式化が可能になった。さらに、3本線回路の入力や出力での接続関係を考慮することで、それぞれのモードの振る舞いを表す方程式を導出できた。
その結果として、回路と環境の幾何学的な位置関係と、それらに接続される素子との電気的な接続関係によって、コモンモードがノーマルモードに変換され、電磁ノイズが発生することを理論的に証明できた。
今回の研究成果により、さまざまな回路の幾何学的構造と電気的接続条件での理論計算ができるようになった。その結果、電磁ノイズをなくすためには、回路が環境に対して幾何学的に対称な構造でありながら、回路と環境が電気的に対称に接続された構造でなければならないことが明らかになった。
さらにこの研究により、今まで目では見えなかった電磁ノイズ現象の振る舞いを定量化し、時間的に追えるようになり、より直感的に現象を理解することが可能になった。この定量化技術は、これまでの経験的なアプローチではなく理論的なアプローチだ。そのため、電磁ノイズの原因を根本的になくすことにつながる可能性があるという。