MIT、古文書を未開封のまま解読する手法を開発――300年前のセキュリティを解析

Image: Courtesy of MIT Libraries

米マサチューセッツ工科大学(MIT)をはじめとする国際チームは、複雑に折りたたまれた未開封の17世紀ヨーロッパの手紙を、仮想空間で開封して内容を読み取る技術を開発した。研究結果は、2021年3月2日付けで『Nature Communications』に掲載されている。

我々が手紙を送るときは通常、封筒に入れて投函する。しかし、封筒が普及する1830年代以前は、人々は第三者に手紙を開封されるのを防ぐため、「レターロッキング」と呼ばれる方法で手紙を郵送していた。一番単純なレターロッキングは、手紙そのものを複雑に折り込んで封筒にしたもので、さらに蝋や紙で封印して機密性を上げるなどバリエーションが豊富だ。これらは、古代の物理的な通信セキュリティ技術と現代のデジタル暗号化との間のミッシングリンクとも考えられており、紙の折り目やひだ、スリット自体が、歴史家や修復家にとって非常に価値ある証拠となっている。

そこで、歴史家、修復家、エンジニア、画像の専門家などが協力して、手紙に損傷を与えることなく内容を調べるために、仮想的に手紙を広げて内容を解読する技術を開発した。

手紙の文字の読み取りには、ロンドン大学クイーンメアリー校の研究チームが開発した、高精度のX線マイクロトモグラフィを使用している。X線でスキャンすることで、紙に書かれたインクに含まれる金属のわずかな痕跡を検出することができる。さらにMITの研究チームは、3次元幾何解析を利用して、折りたたまれた状態でスキャンしたデータから手紙の層を分離し、仮想的に1枚に広げられるアルゴリズムを開発した。この方法では、手紙を折った回数や折り方を事前に知らなくても、手紙を広げたときの折り目パターンを復元し、折り方も推測できる。

その結果、300年前に何らかの事情で配達されないまま保管されていた、未開封の手紙の一部が明らかとなった。1697年7月31日に書かれた手紙は、ある男性がいとこに親族の死亡通知のコピーを送付するよう催促するもので、当時の人々の生活や関心事が垣間見える。

研究チームはさらに、25万通の手紙を調査して、レターロッキングの種類とセキュリティレベルをカテゴライズした。これにより、手紙のスリットや封印、折り目など、小さいながらも重要な情報を保護しながらアーカイブコレクションを保存できる。

今回の成果は、単に開けられなかったものを開け、読めなかったものを読んだというだけでなく、過去と現在、人間と非人間、実物とデジタルが物理的につながった新しく情緒的な歴史を想像できるようになったと、研究チームは語っている。

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