- 2021-9-7
- 制御・IT系, 技術ニュース, 海外ニュース
- Cs3Sb2I9, Jang-Sik Lee, Nature Communications, ハロゲン化物ペロブスカイト型メモリ, 学術, 抵抗スイッチングメモリ, 浦項工科大学(Pohang University of Science and Technology、POSTECH), 超高速スイッチングメモリデバイス
韓国の浦項工科大学(Pohang University of Science and Technology、POSTECH)、Jang-Sik Lee教授率いる研究チームが、超高速スイッチング速度のハロゲン化物ペロブスカイト型メモリの開発に成功した。研究成果は、2021年6月10日付けで『Nature Communications』に掲載されている。
抵抗スイッチングメモリは、構造がシンプルなことに加え、消費電力が少ないことから、次世代メモリデバイスの有力な候補となっている。抵抗スイッチングメモリには、これまでにさまざまな材料が研究されてきた。その中でも、低い動作電圧と高いオン/オフ比を持つハロゲン化物ペロブスカイトは、メモリへの応用が期待されている。しかし、ハロゲン化物ペロブスカイトを用いたメモリデバイスは、スイッチング速度に制限があり実用化の妨げとなっていた。
そこでPOSTECHの研究者らは、第一原理計算と実験検証を組み合わせた方法で、ハロゲン化物ペロブスカイトを用いた超高速スイッチングメモリデバイスを開発した。ハロゲン化物ペロブスカイトの候補となる合計696の化合物の中から、二量体構造を持つCs3Sb2I9をメモリに最適な候補として選択し、計算結果を検証するために、二量体構造のCs3Sb2I9を用いたメモリデバイスを作製した。その結果、層状構造のCs3Sb2I9を用いたメモリに比べて100倍以上も速い20ナノ秒の超高速スイッチングが可能になった。
ペロブスカイトの多くは鉛を含んでいることが問題視されている。しかし、今回の研究では、鉛を含まないペロブスカイトを使用しており環境問題にも配慮している。
「本研究は、超高速スイッチングが可能な抵抗スイッチングメモリの開発に向けた重要なステップとなる」とLee教授は研究の意義を語る。さらに、「この研究は、計算と実験による検証に基づいて、メモリデバイス用の新しい材料を設計する機会を提供するだろう」と述べている。