NSCは2020年1月15日、山形大学 硯里研究室と共同で、ケミカル加工により、自在に湾曲させることができる可変曲面(最小曲率半径R100mm)のガラス製有機ELパネルを世界で初めて開発したと発表した。自在に湾曲させることができるため、車載用ディスプレイなど、曲面が求められる様々な用途に対応する。
開発は、平成29年度経済産業省サポイン事業(戦略的基盤技術高度化支援事業)の支援を受けて実施。昨年開発した高度化したケミカル加工技術による固定曲面のガラス製有機ELパネル(曲率半径R100mm)をベースに、ケミカル加工技術をさらに高度化し、小判サイズ200×100mm、厚さ0.15mmで自在に湾曲させることができる可変曲面(最小曲率半径R100mm)の有機ELパネルを試作した。
ケミカル加工技術の更なる高度化をNSC、湾曲に対応する新たな封止構造の更なる改良を硯里研究室が担当。湾曲させることが難しいとされるガラス製有機ELパネルだが、大きく曲がる固定曲面だけでなく、自在に湾曲させることができるようになった。車載用ディスプレイ等厳しい環境での用途向けに、安価に提供できるという。
同技術は、通常の大判厚板ガラス(0.5mm)に有機ELデバイス、湾曲に対応し得る封止構造を完成(総厚1.0mm)させた後、総厚をケミカル研磨方法によって0.15mmまで薄くする。なおかつ、ケミカル分断方法によって大判ガラスからパネルを分断することで、パネルを微細な傷が無い状態で完成させることができ、自在に湾曲させることができるようにした点が特徴となっている。
有機ELデバイスを作製する際、通常の厚板ガラス(0.5mm)のハンドリングで良いことから、薄板ガラス(0.1mm以下)のハンドリングのような破損をする恐れがないことがこの手法の利点として挙げられる。また、ケミカル加工工程(研磨工程および分断工程)を導入するだけという設備投資が少ない状態で量産できる点、ケミカル加工が物理加工と比較して微細な傷が入りにくく、本来のガラスの強度を保つことができる点も利点となる。
今後は、大判対応の高度化ケミカル加工技術の完成、車載環境への適合性の確保(2020年3月サポイン事業最終年度)を目指す。量産時期は、2021年度を目標としている。