NSCと山形大学、曲がる有機ELパネルを開発――車載用ディスプレイ向けに2021年度の量産目標

NSCは2019年1月17日、山形大学と共同でケミカル研磨技術を用いたガラス基板ベースの曲がる有機ELパネルを世界で初めて開発したと発表した。車載用ディスプレイなど厳しい環境での用途向けに、大きく湾曲した有機ELパネルを安価に提供できるようになるとしている。

車載用ディスプレイは、映像の黒の締まりや色鮮やかさから有機ELが望まれており、インテリアに合わせて湾曲する要望もある。しかし有機ELは水蒸気や酸素に対して敏感に劣化するため、水や酸素のパネル内部への侵入を厳重に抑制する必要がある。そのため、フレキシブル有機ELを達成する方法として、樹脂基板上に無機薄膜からなる水分バリア層を多層積層する方法や厚さ0.1mm以下の薄膜ガラスを用いる方法が提案されてきたが、非常に高価になることや、製造プロセス中に破損しやすいことなどが問題となっていた。

今回NSCと山形大学は共同で、200×100mm、厚さ0.15mm、曲率半径R100mmの湾曲を可能にした有機ELパネルを試作した。通常厚のガラス板に有機ELデバイス、湾曲に対応し得る封止構造を完成した後に、ケミカル研磨法を用いてパネル総厚を0.15mmまで薄くしたもので、NSCがケミカル研磨の高度化を、山形大学が湾曲に対応する新たな封止構造を担当した。

この手法の利点は、有機ELデバイス部を作製する際に通常の厚板ガラスのハンドリングでよいため、薄板ガラスのように破損する恐れがなく、またケミカル研磨工程を導入するだけで済むため、設備投資が少なく曲がる有機ELパネルの量産が可能な点だ。加えて、ケミカル研磨は物理研磨と比較して微細な傷が入りにくく、ガラス本来の強度を保てる。

今後は、大判高度化ケミカル研磨技術の完成と車載環境への適合性の確保を目指すといい、2021年度の量産を目標にしている。

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