- 2020-3-1
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- George Stanley, Science, アルケン, オキソ法, ヒドロホルミル化反応, ホスフィン配位子, ルイジアナ州立大学, ロジウム触媒, 一酸化炭素, 中性コバルト錯体, 学術, 工業用アルデヒド, 水素
ルイジアナ州立大学の研究チームは、従来より低コストで工業用アルデヒドを製造する方法を発表した。以前に触媒として使われていた中性コバルト錯体の代わりに、陽イオン化したコバルト錯体を利用する。現在主流のロジウム触媒の性能にも近く、工業用アルデヒドの製造方法として過去50年の中で大きな発見だとしている。研究結果は、2020年1月31日付けの『Science』に掲載されている。
化学プラントでは、アルデヒドの製造にヒドロホルミル化反応、またはオキソ法と呼ばれる手法を用いる。これは、アルケンと水素、一酸化炭素からアルデヒドを合成する触媒反応だ。合成したアルデヒドから、さらに可塑剤や洗剤が製造される。発見当時は、コバルトを触媒としていたが、現在、多くの化学プラントでは、反応時の圧力が低いこと、設備の建設コストが安く済むことといった理由から、ロジウムベースの触媒を使用している。
しかし研究チームは、ロジウム触媒は価格が高いと指摘する。今日、ロジウムは1オンス(約28g)9800ドル(約108万円)近くに達しているのに対して、コバルトは1オンス90セント(約100円)の価格を保っている。研究チームの開発した触媒はコバルトをベースとしているため、「ロジウム触媒の価格と比べて1万分の1にもかかわらず、反応速度はわずか20分の1で済んでいる」と、研究チームを率いるGeorge Stanley名誉教授は語る。
研究チームは、キレート化したホスフィン配位子によって安定化され、プラスに帯電したコバルト錯体を開発した。研究チームによれば、ヒドロホルミル化反応で作られる製品の約25%は、コバルト触媒でもロジウム触媒でも高い圧力を必要とするという。新しい手法の場合は、中圧で反応し、エネルギー効率の高い触媒を提供できるとしている。従来の中性コバルト触媒よりはるかに高く、ロジウム触媒に近い活性を示した。
この触媒は、単純なアルケンに対する直鎖アルデヒド生成物への選択性は低いが、従来ヒドロホルミル化反応が難しかった内部分岐型のアルケンに対しては優れた活性と選択性を持っている。例えば、洗剤が冷たい水に溶けにくいのは、ロジウム触媒の持つ直線性のためだ。コバルト触媒を利用すれば、より効果的に油と水に反応するように「枝分かれ」した洗剤の分子を作ることができる。
「非常にエネルギー効率が高く、環境にとても優しく、大規模の産業面で実際に使われる触媒を考え出すことは、すべての化学者の夢だ」と、Stanley名誉教授は話している。
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