繰り返しリサイクルしても元の品質を維持するポリマーを開発

Credit: Bill Cotton/Colorado State University

米コロラド州立大学のEugene Chen教授を中心とする研究チームは、軽量かつ耐熱性、高強度、耐久性などの特性を備えた新しいタイプのポリマーを発見したと発表した。このポリマーは元の低分子状態に戻すことができるので、リサイクルしても元の品質を維持でき完全な化学的リサイクルが可能だという。研究成果は『Science Advances』に2020年8月19日付で発表されている。

ポリマーは、モノマー(単量体)と呼ばれる化学的に結合した分子単位が重合して繰り返し構造になっている化合物で、合成ポリマーは、プラスチック、繊維、セラミック、ゴム、コーティング剤などの多くの市販製品に使用されている。研究者らは2015年の先行研究で化学的リサイクル可能なポリマーを開発していたが、製作プロセスで極低温条件が必要となることから、産業利用には向いていなかったという。また、耐熱性が弱く、低分子量からなるポリマーであり、プラスチックより柔らかい素材だったようだ。

その後、さらなる研究による改良を重ねて2018年に開発されたポリマー構造は、先行研究での問題点を解決したという。研究者らは、γ-ブチロラクトン(GBL)をベースとしたポリマーの、αとβの位置にトランス環融合を導入した。トランス環融合により、非重合性GBL環が溶媒を必要とせず、室温で容易に重合して高分子量ポリマーを生成できたという。

今回、発表された研究結果は、高い結晶性と化学的リサイクル性を備えた高性能ポリチオエステルに関するものだ。一般に、簡単に分解できるポリマーは優れた特性を発揮しない。また、結晶性の高い材料は壊れやすい傾向があり、機械的特性を向上させるために高い結晶性を得るには、重合の立体化学を正確に制御できなければならない。2018年の先行研究では、モノマーとポリマーの構造を適切に設計することで、有用な材料特性を示す化学的にリサイクル可能なポリマーを作製することが可能であることが示されていたが、今回発表されたポリマーはこれらの問題に対処するものだという。

研究チームは、開環重合によって室温でプラスチックになる架橋型二環式チオラクトンモノマーを設計。このモノマーから製作されたポリマーは熱安定性を持ち、高い機械的強度、靭性、延性を備えるという。特に注目すべきは、このポリマーを分解すると、元のモノマーに戻すことができ再利用できることだ。100℃の状態で触媒を用いてバルク脱重合を行ったところ、元のモノマーに分解されることが分かり、さらなる実験では、室温状態でも元のモノマーに分解されることが確認された。さらに、両方のプロセスから生成されたモノマーを使用して、新たなプラスチックを作り、分解生成を繰り返すことができたという。

Chen教授は、この材料が従来のプラスチックに代わる持続可能な代替材料になる可能性があるとしており、そもそもポリマーの構造や特性に化学的なリサイクル性が組み込まれていなければ、プラスチックはリサイクル可能かどうかという問題に再び直面することになるだろうと述べている。

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