超高純度鉄の特徴が明らかに――優れた生体適合性を持ち、ストレス応答遺伝子の発現もない新奇生体材料  東北大学

東北大学大学院生命科学研究科 教授の東谷篤志氏ら研究グループは2020年5月13日、表面処理を施すことなく超高純度鉄(ABIKO-iron: 99.9996%)が各種の哺乳類培養細胞を接着、増殖させる基質となることを発表した。ABIKO-iron上で骨分化や筋管への分化誘導もできるという。

各種合金をはじめとする金属材料は、医療用資材として広く利用されているが、長期間体内に移植することで溶出する微量金属の有害な影響、金属毒性や金属アレルギーの発症、移植後の周辺細胞や組織との接着性、適合性が弱いことなどの負の面も見られる。

そこで研究グループは、ABIKO-ironの金属表面での様々な哺乳類培養細胞の細胞接着性と増殖活性、細胞分化能の3つの観点から生体適合性について調査した。その結果、ABIKO-ironが細胞接着性に優れ、金属表面で細胞増殖することが明らかになった。さらに、分化誘導培地に培養液を代えることで、それぞれ筋芽細胞から筋管細胞へ、間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化も誘導できるという。

こうした特徴は、これまでの生体金属材料であるTi合金やCo-Mo合金などと大きく異なっているだけでなく、各種遺伝子発現の解析でも生体毒性や重金属ストレス応答などネガティブな遺伝子発現の誘導がされないとわかった。高い安全性と生体適合性を有することから、革新的なインプラント材、プレートやボルト材、ステント材等への新奇生体材料としての利用が期待される。

上段:マウス横紋筋由来C2C12筋芽細胞のAbiko-Iron上での増殖(左)とその分化誘導5日後の筋管細胞への分化状況(右)をとらえた走査電子顕微鏡像
下段:間葉系幹細胞MSCsのABIKO-iron上での分化誘導前(左)とその分化誘導21日後の骨芽細胞への分化状況(右)をとらえたアリザリンレッド染色像

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