組み込みエンジニアとは?必要なスキル・知識、年収、仕事の将来性

電子機器に組み込むソフトウェアを設計・開発する技術者「組み込みエンジニア」。この記事は、組み込みエンジニアに興味があり、転職を考えているものの、どんな業界かわからない……という方に向けたものです。組み込み分野で必要とされる知識やスキル、企業勤めとフリーランスでの年収の違い、組み込みエンジニアのニーズと将来性などを紹介していきましょう。

組み込みエンジニアのもっとも魅力的なところは、モノ作りと自身が手掛けたモノが実際に動く感動です。組み込みエンジニア業界に興味をお持ちであれば、ぜひご一読ください。(fabcross for エンジニア編集部)

組み込みエンジニアの基礎知識

基礎知識として、まず組み込みエンジニアとは何か。組み込みエンジニアと制御エンジニアの違いや、年収などをご紹介していきましょう。

組み込みエンジニアとは

組み込みエンジニアは、電子機器に組み込むソフトウェアを設計・開発する技術者のことを言います。電子機器を正しく動作させるためには、マイコン(内部)にソフトウェアを組み込む必要があります。たとえば、家電製品や自動車にもマイコンが入っています。

このマイコンにソフトウェアを組み込むことで、ボタンを押すだけでテレビがつく、アクセルを踏むだけで車が走る、ということを可能にしているのです。

そして、このマイコンに組み込むソフトウェアを「組み込みシステム」と呼びます。マイコンが制御しているのは1秒以下の世界です。その世界を正しく制御し、新たな機械・電子機器を開発する人が組み込みエンジニアです。

ご存じの方も多いと思いますが、組み込みエンジニアの主な仕事内容は、V字工程と言われる、要求分析・概要設計・詳細設計・コーディング・単体テスト・機能テスト・ソフトウェアテストと、7つのフェーズに分けられていています。

1. 要求分析
どんな動きをするモノを作るのかを決めます。新規でモノを開発することもあれば、既にあるモノに対して追加機能を搭載することもあります。

2. 概要設計
3. 詳細設計
設計では要求される動きに対して、プログラムでどうやって要求される動きを実現するかを考えて、動きをコードレベルに落とし込みます。

4. コーディング
コーディングでは、設計で決めた動きを実際にプログラミングしていきます。組み込みでは主に、C言語とアセンブラ言語が主流となっています。

5. 単体テスト
6. 機能テスト
7. ソフトウェアテスト
単体テスト・機能テスト・ソフトウェアテストでは、コーディングした制御内容が設計通りの動きになっているかを確認します。ここでエラーや不具合処理などを見つければ、コーディングしなおして再度テストという感じで進めます。

組み込みエンジニアと制御エンジニアの違い

組み込みエンジニアは、電子機器が動くための仕組みを作ることが仕事です。一方、制御エンジニアは動作を制御する仕組みを作ることが仕事です。

組み込みと合わせて必要とされることが多い業務なので一緒にされがちですが、厳密に言えばこのふたつは別物になります。

自動車でたとえると、車が発進したり停止したりするシステム自体を組み込むことが組み込みエンジニアの仕事です。そして、そのシステムに対して、どれぐらいアクセルを踏み込めば、どれぐらいのスピードで走るのか?どれぐらいのハンドリングで車を右折左折させるのか?などを制御することが、制御エンジニアの仕事です。

組み込みエンジニアの年収

一般的な正社員として働いた場合、20代の平均年収は412.4万円、30代では592.6万円、40代では778.7万円、50代では955.9万円というデータがあります。全体の年収平均を見ても653.3万と、かなり年収は高い傾向にあるようです。(メイテックネクスト調べ)

もちろん未経験者の場合は、スタートとなる年収が少し低くなる傾向にありますし、取得している資格や個人のスキルによっても大きく異なります。たとえば「基本情報技術者」の資格を持っているだけで月収にプラス1万など、資格手当がつく企業も多いようです。

また、フリーランスで組み込みエンジニアをしている場合には、企業勤めより年収が高い傾向にあります。より質の高い技術的スキルと対人スキルが求められますが、近年はフリーランスで活動する人も増えています。

組み込みエンジニアに必要なスキル・知識

ここでは、組み込み分野で使われている言語や、そのほか必要となるスキルをご紹介していきましょう。

プログラミングスキル

ソフトウェアを動作させるためには、プログラミングが必要になります。組み込みエンジニアの仕事ではC言語系(C、C++)やアセンブラなどが使用されることが多いです。

このほか最近では、初心者向けの言語として、Python やRubyといった言語も推奨されています。ただし、リアルタイム性が要求される組み込みにPython やRubyを用いると、処理速度が非常に遅く、実現できる動作が限られてしまうという難点も。そのためいずれは、C言語やアセンブラなど、コンパイラ型言語の習得が必須になります。

コミュニケーションスキル

クライアントの希望を正確に汲み取って、ソフトウェアの設計を行う必要があるため、技術面だけでなく、コミュニケーションにもある程度のスキルが求められます。設計を進めるうえでは、自身が認識した要求内容を明確に伝えて、クライアントとの認識合わせをすることも必要になるでしょう。

また、ソフトウェアの高機能化に伴い、近年では開発規模が拡大傾向にあり、複数名で開発を行うケースが多くなります。プロジェクトメンバーとコミュニケーションを取りながら仕事を進めていくことになるでしょう。このとき、コミュニケーションをとるメンバーはソフトウェアチームのみではなく、ハードウェアや仕上がったモノの検査を担当するメンバーとも話し合いながら、設計開発を進めていくことになります。

中には、技術職だから、コミュニケーションスキルがいらないと考える方もいらっしゃると思いますが、思いのほかコミュニケーションスキルが求められる業種であることを覚えておくと安心です。

ハードウェアに関する知識

場合によっては、ハードウェアの回路図面からソフトウェアの設計を行うケースもあります。回路図面を読み解くには、ハードウェアに関する知識と共に電気電子に関する知識が必要です。

実機を使ってのソフトウェアテストを行うときには、結線を正しく繋ぎ合わせ電圧を印加することでモノが動き、初めてテストが可能になります。まずは電気電子について学習し、電流・電圧の動きや特性について理解する必要があるでしょう。

組み込みエンジニアの将来性

ここでは、今後IT業界における組み込みエンジニアのニーズと、将来性について紹介します。

家電製品や情報通信機器、産業機械など、社会に存在する電子機器には組み込みシステムが必要不可欠です。現在組み込みエンジニアの数は少なく、企業も人手が足りない状況になっているため、どのIT企業でも、組み込みエンジニア人材を求めています。

今後増大化されていくIoTシステムや、発展が期待されるAIの普及によって、ネットワーク技術を組み込んだ製品が増えていきます。新しく機能を搭載するには、ソフトウェアの組み込みが必要になります。組み込みシステムに対する需要は今後も増加していくため、これに合わせて、組み込みエンジニアの需要も拡大していくと予測されるでしょう。

ますます需要が高まる「組み込みエンジニア」

組み込み業界では人手が不足しているため、需要がとても高い職業です。C言語と電気電子をマスターするだけでも、あなたの人材価値は飛躍的に上昇するでしょう。年収も日本平均で見た場合比較的高く、フリーランスで活躍できれば、より高い収入を得ることも可能です。将来性のある組み込みエンジニアに就職・転職を考えてみてはいかがでしょう?

取材協力先

メイテックネクスト

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