太陽電池を高性能化するペロブスカイト薄膜の表面修飾法を開発 京都大など研究グループ

京都大学は2023年1月26日、理化学研究所や英オックスフォード大学などと共同で、スズ-鉛混合系ペロブスカイト薄膜を効果的に表面修飾する手法(パッシベーション法)を開発したと発表した。この手法を使ったスズを含むペロブスカイト太陽電池で22.7%の光電変換効率を達成。今後、高性能なペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた開発研究を進めていく。

ペロブスカイト太陽電池のさらなる高性能化に向けて、ペロブスカイト層の表面の構造修飾(パッシベーション)技術の開発が活発に行われている。

「スズ-鉛混合型ペロブスカイト半導体」は狭いバンドギャップ(~1.2eV)を持ち、近赤外(~1050nm)までの光電変換も可能なことから、タンデム型太陽電池のボトムセル材料として期待されている。

研究グループはスズ-鉛混合型ペロブスカイト半導体薄膜の上下表面構造修飾法として、既にエチレンジアンモニウム ジヨード(EDAI2)とグリシン塩酸塩(GlyHCl)を用いた手法を開発。この手法を使って世界記録となる23.6%の光電変換効率を達成している。しかし、この手法がどのようなメカニズムでペロブスカイト表面の構造修飾を可能にしているのか、その構造や電子的な効果について詳しく解明できていなかった。

今回、研究グループは、新たにジアミンとフラーレンのカルボン酸誘導体を用いた表面処理法を開発し、この表面構造修飾のメカニズムとその相乗的効果についての解明を試みた。

その結果、ペロブスカイト薄膜の表面をピペラジン(PP)などのジアミンで処理することで、表面のプロトン移動反応が起こりジアンモニウムで構造修飾することが可能なことがわかった。さらに、フラーレンのトリカルボン酸誘導体(CPTA)を塗布することで、ペロブスカイト薄膜表面のスズ上に選択的に配位結合できることを発見した。

研究グループは、こうした表面修飾を施したペロブスカイト半導体を用いて実際に太陽電池を作製。CPTAとジアミン(PP)の混合溶液で処理することで開放電圧が向上し、曲線因子(FF)と短絡電流密度の向上で22.3%の光電変換効率を得た。

作製した太陽電池セルの光電変換効率を3カ月間にわたって検証したところ、各月の平均値は21.10±0.67%、20.07±0.72%、21.61±0.40%を記録し、最大で22.7%となった。また、耐久性も高く、窒素ガス雰囲気下の約2000時間後でも96%の特性を保持し、連続光照射条件下でも約450時間で90%の特性を保持した。

今回の手法はスズ系ペロブスカイト半導体の表面修飾にも適用が可能で、鉛フリー型のペロブスカイト太陽電池の高性能化にもつながることが期待できる。研究グループは今回の成果を京大発ベンチャーに技術移転し、実用化を進めていく。研究成果は2022年12月8日、国際学術誌「Advanced Materials」にオンライン掲載された。

関連情報

スズを含むペロブスカイト太陽電池:ペロブスカイト薄膜の相乗的表面修飾法を開発―22.7%の光電変換効率と高耐久性を達成― | 京都大学

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