精密な微小機械システムにおける材料の摩耗量を予測可能な理論式を提案――スーパーコンピューター「MASAMUNE-IMR」の活用成果 東北大学

東北大学は2020年12月8日、同大学金属材料研究所の研究グループが、精密な微小機械システムにおける材料の摩耗量を予測可能な理論式を提案したと発表した。同発表によると、世界初の成果だという。

ドローンやロボット、自動車などに用いられる精密な微小機械システムでは、微少な摩耗であっても精度と耐久性に影響するため、摩耗量の低減が極限まで要求される。一方で、従来の摩耗量の予測式は通常サイズの機械システムに対するもので、原子レベルの化学反応により数十nmの摩擦界面で起こる微小な機械システムの摩耗現象には適用できないことが課題となっていた。

同研究グループは、1秒間に3000兆回の計算が可能な同研究所のスーパーコンピューター「MASAMUNE-IMR」(冒頭の画像)を用いて、微小機械システムのコーティング材であるダイヤモンドライクカーボンを例に、微小機械システムの摩耗の原因となる摩擦界面における化学反応をシミュレーションした。シミュレータには、同研究所で開発した大規模分子動力学シミュレータ「LASKYO」を用いた。

シミュレーションの結果として、「2つの表面が接触したことによる化学結合の形成」および「この化学結合によって引っ張られた原子の表面からの脱離」の2段階の化学反応により、微小機械システムの摩耗が起こることが判明した。また同研究グループは、これらの2段階の要素に反応速度論を応用し、微小機械システムに対する材料の摩耗量の予測式を提案した。

さらに、MASAMUNE-IMRを用いてダイヤモンドライクカーボンの摩耗量をシミュレーションしたところ、上述の摩耗量の予測式の有効性および汎用性が検証された。微小機械システムの長寿命化や故障、事故の防止に寄与することが期待される。

同研究グループは今後、今回提案した摩耗の予測式およびMASAMUNE-IMRを活用し、微小機械システムの長寿命化と故障や事故の防止に向けたより具体的な材料設計、材料開発を進める。

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