アルミニウム負極の充放電時における体積膨縮の制御に成功――リチウムイオン二次電池の高性能化へ 東北大と住友化学

東北大学は2020年4月27日、住友化学と共同で、高純度アルミニウム箔を使用して、リチウムイオン二次電池のアルミニウム負極の課題であった充放電時の体積膨縮を制御できる機構を発見したと発表した。

リチウムイオン二次電池の負極は現在炭素系素材が主流だが、電池の高容量化を睨んで同素材と比較して3~10倍のエネルギーを蓄積できるシリコンや、スズやアルミニウムなどの金属系材料の使用が期待されている。しかしそれらの材料は、充放電時に2~4倍膨縮するために内部の電極構造が崩れやすいという課題があった。

今回の研究では、高純度アルミニウム箔の硬さを最適化することで、充放電時の体積膨縮を制御できることを見出した。硬さの最適化によって、充電時に箔全体で均一にリチウムイオンの受け入れができる。これにより均一にアルミニウム-リチウム金属間化合物が形成されるが、リチウムの比率は箔表面が高く深部に行くほど低くなるという濃度勾配ができる。それにより箔深部のアルミニウムが一様に表面に押し上げられることで、厚み方向のみに体積膨張が進み、充電(リチウム化)が行われる。

また放電時には、リチウム化により体積膨張したアルミニウム-リチウム合金電極箔の表面からリチウムイオンを放出する際に、多くの孔の空いたアルミニウム構造を作り出すために、次回の充電時にも効率的にリチウムイオンを受け入れできる。

さらに、箔の底部のアルミニウムは変化せずに電流を集め、電極構造を維持するための従来の銅箔を代替することができる。これにより高純度アルミニウムのみの一体型の負極が可能になる。

一体型アルミニウム負極が実現すれば、従来と比較してリチウムイオン二次電池の製造プロセスを簡素化でき、さらに高容量化や軽量化、低価格化が期待できるという。同大学らは今後、一体型アルミニウム負極の実現に向けた研究開発に引き続き取り組む。

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