日本でもIndustry4.0推進の動き。数カ月で急増したIoT関連のエンジニアニーズ


本コラムは、エンジニア専門の人材紹介会社メイテックネクストのキャリアコンサルタント・河辺真典氏からの寄稿です。旬のキーワードを取り上げ、エンジニアのキャリア形成に役立つ情報を発信していきます。


ドイツでは産学官が一体となって、第4次産業革命とも言われる「Industry4.0」を推進しています。

先日のコラムでは「IoT」について、ニュースでは取り上げられてもエンジニアニーズは本格化していないと解説しましたが、数カ月経って状況が変わりました。日本でもIndustry4.0が本格的に広まる兆しが見え始め、Industry4.0やIoTといった分野で、エンジニアニーズが急激に盛り上がってきているのです。

Industry4.0とは何か

ドイツが中心になって提唱しているIndustry4.0では、「CPS(Cyber Physical System)」を活用してものづくりの現場の生産性を劇的に改善しようとしています。

CPSとは、IoT(モノのインターネット)の一種。具体的には、ロボットなどの生産設備にセンサを取り付け、センサから取得したデータを人工知能(AI)で解析し、最も効率的な生産方法を生産設備にフィードバックします。これにより、工場内のロボットは生産に最適な行動を取れるようになります。

これまで工場の生産性を高めるには、現場にいる人間の判断が必要でした。しかしCPSの活用が進むことで、人間の関与なしでも工場の生産工程を最適化できるようになると期待されています。Industry4.0が普及・発展していけば、完全自動生産の時代が到来するかもしれません。

Industry4.0、カギとなる技術はセンサやIoTか

現状でも、工場の生産工程を最適化するために、マイコン制御している機械同士をつなぎ、生産管理室などで稼働状況をモニタリングしています。しかし、いまだ人間が機械の稼働状況を管理して、必要に応じて適切な判断を下さなくてはいけないので、完全自動化は達成できていません。

なぜ人間が判断する必要があるかと言うと、「見る」「聞く」「触る」などの五感を生かした判断が必要になるからです。例えば、自動車生産の最終ラインでは、塗装にムラなどがあると車体の表面にわずかな凹凸が生まれてしまうので、ひずみがあるかどうかを人間が手で触って確認しています。

完全自動化を実現するには、職人さんが指先の感覚で見抜いてきたミクロン単位の違いを検知できるようなセンサが必要です。人間にしか気付けないようなほんのわずかなひずみでも捉えられるセンサが開発されれば、後は人工知能がセンサからの情報を分析してくれます。そうなれば、現場にいる人間の判断に頼らなくとも、機械だけで生産性を最大化できるようになるでしょう。

Industry4.0が発展していけば、さまざまなメーカーの製造現場で生産効率を改善できるようになっていくでしょう。例えばテレビで良く取り上げられるポテトチップスを作る食品工場では、揚げ過ぎて焦がしてしまったチップスを高速で1枚1枚取り除く工程があります。高速画像処理技術とメカトロ技術を組み合わせたこの工程もすごいのですが、仮にIndustry4.0によって揚げる工程の温度や状態をAIが緻密に管理することができたら、そもそもチップスを1枚も焦がさずに揚げられるようなるかもしれませんね。

そのようなメリットのあるIndustry4.0を推し進めているのがドイツ。ドイツに遅れまいと、最近では日本も官民を挙げてIndustry4.0の普及に取り組み始めました。それに伴い、Industry4.0と関連がありそうな企業からの求人が増えています。

次回の記事では、Industry4.0によってどんなエンジニアの採用ニーズが高まっているのか、取り上げていく予定です。


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河辺 真典(メイテックネクスト 執行役員)

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