GSアライアンスは2021年5月18日、金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framework)をベースとしたヘテロ触媒(固体酸触媒)を開発したと発表した。
化学産業では、硫酸/リン酸/塩酸といった液体触媒が反応を起こす酸触媒として大量に利用されている。これらは回収するのに手間がかかることもあり、一般的に廃棄を前提として利用されることが多い。
例えば硫酸は、リサイクルできない触媒として年間1500万トン超が消費されており、エネルギーの浪費や廃棄物の排出が環境に負荷を与えている。また、毒性や腐食性が強いことから、安全性の確保やプラントの維持に労力を要するほか、除去しきれず製品の品質に悪影響を及ぼすケースもみられる。
一方で、ゼオライトやメソポーラス物質、ヘテロポリ酸、硫酸化ジルコニア、硫酸化炭素系材料といったヘテロ触媒は、ろ過すれば回収できる。代表的なヘテロ触媒としてはアンバーリストが挙げられるが、高価である点がネックとなっていた。
同社は今回、自社で合成したいくつかのMOFをベースに表面官能基などを調整し、スルホン基を触媒官能基とするヘテロ触媒を開発した。約80℃の環境下でエステル化反応を促進する触媒として、開発品がアンバーリストに匹敵する高い触媒能を有することを確認している。
MOFは、金属カチオンとそれを架橋する多座配位子によって構成される物質で、金属や有機配位子を制御することで細孔構造や比表面積、形態などを分子レベルで調整できる。また、従来の多孔性材料よりも軽く、数千m2/g以上と大きな比表面積を有する。理論上は、数万種類以上のMOFが金属と有機配位子の組み合わせで合成できるとされる。
同社は今後、触媒活性のさらなる向上を図るとともにサンプル品を供給し、国内外の顧客に向けた事業展開を進める。