プラスチックごみを食用タンパク質へ――バクテリアと熱を使った「食料製造機」

MTU

プラスチックごみ問題と食糧問題は、ともに人類が抱える重要課題だ。この2つの課題を同時に解決する画期的なアイデアで、イリノイ大学教授のTing Lu氏とミシガン工科大学准教授のSteve Techtmann氏は「Future Insight prize 2021」を受賞し、100万ユーロ(約1億3000万円)の資金提供を得た。Future Insight prizeは2019年に開始した、健康、エネルギー分野の革新的な研究に贈られる賞だ。

「From Waste to Food: A Generator of Future Food(ゴミから食糧を、未来食の製造機)」と名付けられた受賞した研究のコンセプトは、微生物と熱の力を利用してプラスチックや通常は食用できないバイオマスを、食用タンパク質に変換するというものだ。

研究者たちが考える食糧製造機システムは次の通りだ。投入口からプラスチックを入れるとプラスチックはまず処理炉で熱によりポリマーを解重合し、より生分解性の高い油のような化合物に分解する。この分解物が微生物のいるタンクに流れていき、油を食べられる微生物にこのプラスチック分解物をエサとして与え成長させるというものだ。約55%がタンパク質である微生物を、乾燥粉末にして利用する。

Future Insight prizeを主宰するメルクによると、このプロジェクトにより出来上がる食品は、必要な栄養がすべて含まれており、毒性がなく、健康上の利点があり、さらに個人的なニーズにも対応できるという。

研究者たちはこのプロジェクトにおいて、プラスチックなどの廃棄物を栄養源として利用できる微生物を環境中から探索し、微生物が産生する酵素を新たに発見するとともに、遺伝子工学を利用して特定のアミノ酸や多価不飽和脂肪酸などの栄養素を高めることを目指している。さらに、合成生物学的アプローチにより、プロバイオティクスの強化、高栄養化、病原体に対する抵抗力の強化、個人に対する効果の付与にも取り組むという。

現在はさまざまなPETを用いて、少ないエネルギーで微生物のエサとなる分解物を生産するための方法を研究中だ。

このプロジェクトは国防高等研究計画局(DARPA)から共同契約として、4年間で720万ドル(約7億9000万円)の資金提供を受けている。今回新たな資金提供を受けたことにより、Techtmann氏は「この賞を受賞できたことで、ハイリスク・ハイリターンの研究をより迅速に進めることができる」と述べている。

今回受賞した画期的な技術は、プラスチックごみの問題を解決しながら、安全で持続可能な食糧供給を可能にする可能性を秘めている。

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