- 2022-3-9
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- Nature Communications, ポリウレタン, マサチューセッツ工科大学(MIT), 上海交通大学, 太陽光, 太陽熱脱塩システム, 学術, 毛管現象, 海水, 淡水化
マサチューセッツ工科大学(MIT)と上海交通大学の研究チームは、太陽光を利用して、低コストかつ効率的に海水を淡水化できるシステムを開発した。従来と異なり、毛管現象を利用しないシステムとすることで、装置への塩分の付着を防ぎ、耐久性を高めている。海水から飲料水を確保できるだけでなく、廃水の処理や、医療器具の消毒にも利用できる。研究結果は、2022年2月14日付けの『Nature Communications』に掲載されている。
現在、世界の3分の2の人々が水不足に悩まされていると言われている。また、そのような地域では電力不足にも直面している。そのため、太陽の熱だけを利用して海水や汽水を淡水化できる装置の開発へ注目が集まっている。太陽熱脱塩システムの多くは、毛細管現象を利用しているため、塩分が蓄積しやすいうえに清掃が困難で、仕組みを複雑にし、コストがかかっていた。
そこで、研究チームは毛細管ではなく、対流を利用した層状の脱塩システムを開発した。さらに、新しい材料を開発するのではなく、ポリウレタンなど日用品を利用することでコストを抑えている。
研究チームのレイヤーシステムは、黒い熱吸収材と穴あきポリウレタンの浮遊式断熱層をベースにし、タンクや池など深さのある貯水槽に設置される。穴あきポリウレタン層の上に広がる薄い水の層は太陽熱で暖められ、界面から蒸発する。塩分を多く含んだ上層の水の密度は非常に高くなり、下層と密度差が生まれる。その結果、自然に対流が発生し、脱塩プロセスが進む。断熱層の穴は直径2.5mmと、対流を促しつつ塩の蓄積を防げる大きさだ。蒸発した水を凝縮すれば、純水が得られる。
小型の脱塩システムを使った実験では、太陽光から80%以上の効率で、20wt%の塩分を除去できることを確認した。1週間使用しても装置には塩分の付着は見られず、波を想定してシステムに外力を加えても直ちに安定した姿勢に復帰できた。
研究チームは、実用化に向けた装置の大型化と水の生産効率の改善は、数年以内に可能だと考えている。試算によれば、1世帯が1日に必要な飲料水を確保するのに必要な大きさは1平方メートルで、その材料費はわずか4ドル(約460円)だとしている。
実用化されれば、オフグリッド地域や災害地域へ安全な水を提供したり、医療器具の高温スチーム殺菌に使えると期待される。特に、構成がシンプルなことから、発展途上国において短期間で効果を発揮できると研究チームは語っている。