- 2022-6-30
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- Investigative Ophthalmology & Visual Science, アングリア・ラスキン大学, オキシステロール, コレステロール誘導体, タンパク質, 学術, 水晶体, 白内障
英アングリア・ラスキン大学の研究チームは、マウスを用いた実験で、オキシステロールが白内障治療薬として有効である可能性を示した。現在では手術でしか治せない白内障が、近い将来薬物治療できるようになるかもしれない画期的な成果だ。研究成果は『Investigative Ophthalmology & Visual Science』に2022年5月16日付で公開されている。
白内障は、水晶体を構成するタンパク質の異常変質が原因で水晶体が混濁する疾患で、加齢とともに進行する。タンパク質が凝集して大きな塊となることで光が散乱し、網膜への透過が低下して視力に影響を及ぼす。WHOによると世界の白内障患者は6500万人を超えているが、濁った水晶体を元に戻す薬は現状存在せず、視力の回復には手術しか治療法がない。
オキシステロールとは、オートファジーなど様々な細胞機能に関与しているコレステロール誘導体の総称だ。これまでに抗白内障治療薬として提案されていたが、水晶体の光学特性に与える影響は研究されていなかった。
今回研究チームは、白内障のモデルマウスにオキシステロールの一種を点眼投与し、61%の水晶体で屈折率が顕著に改善したことを明らかにした。また、46%の症例で水晶体の混濁が軽減したことも確認した。これらの結果は、オキシステロールにより水晶体のタンパク質変質が改善していることを示している。
ただし、研究チームによると、今回の研究では一部の白内障でのみ改善が見られ、全ての白内障で効果があったわけではないという。今後、抗白内障薬を開発する上で、白内障のタイプを分けて考える必要があるが、今回の研究成果は白内障を手術ではなく薬物で治療するための重要な一歩と言えるだろう。
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