より強力な合金を求めて――シンクロトロン放射X線CTで溶融金属の凝固過程を観察

英バーミンガム大学の研究チームが、高速シンクロトロン放射X線CTを用いて、溶融金属が冷却により凝固する際の結晶構造の微視的変化を観察し、冷却条件や外部磁場の影響を明らかにすることに成功した。2022年6月1日の『Acta Materialia』誌に公開された論文においては、Al2Cu金属間化合物の凝固過程における数μmサイズのロッド状基本単位と、それが積層して形成されるデンドライトの生成過程を詳細に観察するとともに、0.5T(テスラ)の外部磁場の付加によって、極めて微細で整列した結晶構造が得られることを確認した。このような結晶構造の制御によって、鋳造や溶接における金属材料の機械的性質を向上する道が拓けると期待している。

溶融金属の凝固過程については古くから研究が進められ、冷却に伴う結晶の核生成と成長およびデンドライト形成などに関する理論が構築されている。実際的な経験とほぼ整合するものであり、これまで多様な金属産業技術を広く支えてきた理論だと言える。

しかしながら、一般的に金属の凝固過程は高温で急速に進行する現象であり、その結晶構造の微視的変化を直接観察するのは容易ではない。バーミンガム大学金属材料工学科のBiao Cai博士が指導する研究チームは、金属材料研究分野において、その場中性子回折や「シンクロトロン放射X線CT」など放射光を積極的に活用している。

研究チームは、高速シンクロトロン放射X線CTを用いて、Al2Cu金属間化合物の凝固過程を解析した。その結果、凝固する結晶の成長過程には、数μmサイズのロッド状基本単位と、それが積層して形成されるデンドライトが存在することを実証した。基本単位の断面形状は、始めはL字型であり、建築ブロックのように互いの上に積層するが、冷却が進むと形状を変えてU字型に変化し、最終的には空洞を持つ立方体形状に変化する。このような基本単位が、層ごとに積層してファセット状デンドライトを形成する。基本単位とデンドライトの成長方向および形態は、温度勾配や冷却速度、外部磁場の影響を強く受ける。特に、縦方向に凝固する溶融Al2Cu金属間化合物を回転させながら、横方向に0.5Tの外部磁場を付加すると、磁場の無い場合に比べて極めて微細で非常に整列した結晶構造が得られることを確認した。研究チームは、凝固過程の結晶構造制御によって、鋳造製品や溶接継手における金属材料の引張強度など、機械的性質を向上する道が拓けると期待している。

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