有人月面基地の実現に向けて。-170℃以下になっても活動できるエネルギー供給方法を研究

欧州宇宙機関(ESA)は将来の月面ミッションに備え、月の長く寒い夜を乗り切るための蓄熱技術を研究している。

太陽光の当たらない月の夜では、気温は-170℃を下回る。高緯度地方では夜の時間は短いが、場所によってはまったく太陽光が当たらない夜が続くところもある。

これまでいくつもの月面探査が、月の長く寒い夜のために中止を余儀なくされてきた。例えば、1973年1月に旧ソビエト連邦が打ち上げた月面探査車ルノホート2号は着陸から約4カ月後に機能を停止したが、これは夜間の保温のために搭載していた原子力熱源の能力が徐々に低下したことが原因のひとつと考えられている。

アポロ有人ミッションの場合、宇宙飛行士は月の早朝にあたる地域に数日間留まっていただけだが、将来的な月への定住を考えると昼と同様に夜を過ごす必要がある。これまでエネルギー源としては原子力(原子力熱源原子力電池)が解決策として考えられてきたが、ESAでは持続可能な解決策として、「レゴリス」(堆積層)と呼ばれる月の砂への太陽光エネルギーの蓄積技術を研究している。

この技術では、月のレゴリス中に設置された温度差で駆動する熱機関と、太陽光を集める多数の鏡を利用する。太陽光で照らされる日中の気温は100度を超え、この太陽光からのエネルギーで熱機関は連続的に稼働し、余剰の熱量をレゴリスに蓄積する。夜間は、日中に熱せられたレゴリスから徐々に放射される熱を使って、熱機関は連続して運転を続ける。

この原理は詳細の検討が終わり、次の段階として一般研究プログラム(GSP)として数値シミュレーションによる研究が行われることになっている。ESAのMoritz Fontaine氏は「研究結果は、原理の実証のための小型施設を建設するに足るものになるだろう」と述べている。

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